[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

松原 亮介 Ryosuke Matsubara

[スポンサーリンク]

松原亮介(まつばら りょうすけ MATSUBARA Ryosuke、1978-)は、日本の化学者である。専門は有機合成、有機光化学。神戸大学准教授。

経歴

2001 東京大学薬学部 卒業
2003 東京大学大学院薬学系研究科・分子薬学専攻 修士課程修了(小林修教授)
2003~2005 東京大学大学院薬学系研究科・分子薬学専攻 博士課程在籍(2005年中退) この間、日本学術振興会特別研究員DC1
2005~2007 東京大学大学院薬学系研究科助手
2007 博士(薬学)取得
2007~2009 東京大学大学院理学系研究科助教
2009~2011 マサチューセッツ工科大学(Timothy F. Jamison教授) 日本学術振興会海外特別研究員
2011~ 神戸大学大学院理学研究科准教授

受賞歴

2018 神戸大学共通教育ベストティーチャー賞
2014 井上リサーチアウォード
2013 有機合成化学協会 中外製薬研究企画賞
2012 日本化学会第92春季年会 優秀講演賞(学術)

研究業績

(1)高還元力を有する有機光触媒に関する研究

光を吸収して化学エネルギーに変換する光触媒は、化石燃料に頼らない社会を築くうえで重要である。有機合成における光反応では、Ir(ppy)3やRu(bpy)32+など遷移金属錯体が光触媒として用いられることが多い。しかし、これらの光励起状態の還元力は十分ではなく、例えば還元電位の低い(負に大きい)臭化ベンゼンや塩化ベンゼンの一電子還元は難しい。そこで、より高い還元力を持つ光触媒の開発が望まれていた。
我々は最近カルバゾールを基盤とする新たな有機光触媒を開発し、通常一電子的還元が困難な臭化ベンゼン、塩化ベンゼン、フッ化ベンゼンの光還元を可視光励起にて達成した。高い還元力を実現するためには、カルバゾール上の置換基の立体的因子と電子的因子を巧く組み合わせ、電荷分離励起状態を生成させることが重要であった。

(2)フロキサンの合成法開発と応用展開

あまり研究が進んでいないヘテロ芳香環であるフロキサン(1,2,5-オキサジアゾール-2-オキシド)の合成法開発と応用展開を行っている。

2-1.フロキサンのポストリング修飾法の開発

フロキサン合成の効率化を目的として、フロキサン環を構築した後、二つの置換基を順次導入するポストリング修飾法を実現した。従来法と比べて、多種類のフロキサンを簡便に合成することができる。

2-2.光に応答して一酸化窒素を放出するフロキサン分子の創製

一酸化窒素は生体内にて多くの機能を持つシグナル伝達物質であり、創薬のターゲット分子として注目されている。室温でガス状の小分子である一酸化窒素を、量・時間・場所をコントロールして生体に投与する技術が求められている。
最近我々は、光を照射すると一酸化窒素を放出するフロキサン分子を創製した。光を操作することで、一酸化窒素を放出する場所や量をコントロールすることができる。一酸化窒素の放出は、フロキサンの光異性化が関与したユニークなメカニズムで引き起こされることが分かっている。

関連動画

名言集

コメント・その他

関連文献

  1. R. Matsubara, T. Shimada, Y. Kobori, T. Yabuta, T. Osakai, M. Hayashi “Photoinduced Charge-Transfer State of 4-Carbazolyl-3-(triluoromethyl)benzoic Acid: Photophysical Property and Application to Reduction of Carbon-Halogen Bonds as a Sensitizer” Chem. Asian J. 11, 2006–2010 (2016).
  2. R. Matsubara, T. Yabuta, U. Md Idros, M. Hayashi, F. Ema, Y. Kobori, K. Sakata “UVA- and visible light-mediated generation of carbon radicals from organochlorides using non-metal photocatalyst” J. Org. Chem. 83, 9381–9390 (2018).
  3. C. P. Seymour, R. Tohda, M. Tsubaki, M. Hayashi, R. Matsubara “Photosensitization of fluorofuroxans and its application to the development of visible light-triggered nitric oxide donor” J. Org. Chem. 82, 9647–9654 (2017).
  4. R. Matsubara, H. Kim, T. Sakaguchi, W. Xie, X. Zhao, Y. Nagoshi, C. Wang, M. Tateiwa, A. Ando, M. Hayashi, M. Yamanaka, T. Tsuneda “Modular synthesis of carbon-substituted furoxans via radical addition pathway. Useful tool for transformation of aliphatic carboxylic acids based on “build-and-scrap” strategy” Org. Lett. 22, 1182–1187 (2020).

関連書籍

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 竹本 佳司 Yoshiji Takemoto
  2. アレン・バード Allen J. Bard
  3. アルバート・エッシェンモーザー Albert Eschenmos…
  4. クリストファー・チャン Christopher J. Chang…
  5. クリスチャン・ハートウィッグ Christian Hertwec…
  6. アンドリュー・ハミルトン Andrew D. Hamilton
  7. デヴィッド・リー David A. Leigh
  8. ロジャー・コーンバーグ Roger Kornberg

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジョン・フレシェ Jean M. J. Frechet
  2. クレブス回路代謝物と水素でエネルギー炭素資源を創出
  3. 続々と提供される化学に特化したAIサービス
  4. 次世代の産学連携拠点「三井リンクラボ柏の葉」を訪問しました!
  5. リンダウ会議に行ってきた③
  6. とある化学者の海外研究生活:イギリス編
  7. どろどろ血液でもへっちゃら
  8. オンライン講演会に参加してみた~学部生の挑戦記録~
  9. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑫:「コクヨのペーパーナイフ」の巻
  10. だんだん柔らかくなるCOF!柔軟性の違いによる特性変化

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP