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大栗 博毅 Hiroki Oguri

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大栗博毅(おおぐりひろき、1970年8月24日)は日本の有機化学者である。東京大学理学系研究科教授。

経歴

1993 東北大学理学部卒業
1998 東北大学大学院理学研究科 博士課程修了 (平間正博 教授)
1998–2003 東北大学大学院理学研究科化学専攻 助手 (平間正博 教授)
2003 ハーバード大学、化学・化学生物学科 訪問研究員 (Stuart L. Schreiber 教授)
2004 北海道大学大学院理学研究科化学専攻 助教授 (及川英秋 教授)
2007 同大准教授 (及川英秋 教授)
2007–2011 北海道大学創成機構流動部門未踏系
2013–2016 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究者 [分子技術と新機能創出領域] 2015–2020 東京農工大学大学院工学研究員応用化学部門 教授
2020– 東京大学理学系研究科 教授

受賞歴

2000 第17回井上研究奨励賞
2002 天然物化学談話会奨励賞
2006 第55回日本化学会進歩賞
2010 Banyu Chemist Award
2017 長瀬研究振興賞
2019 Asian Core Program Lectureship Awards 2019
 [2カ国より受賞 China & Thailand] 2019 東京農工大学 学長賞
2021 シオノギ・低分子創薬化学賞, 有機合成化学協会企業冠賞

研究概要
骨格多様化合成
生合成経路を模倣し、共通の中間体から5種類のインドールアルカロイド骨格の構築に成功した(1)。仮想生合成中間体であるジヒドロセコジン類似の共通中間体を独自で設定し、環化様式によってイボガ型、アスピドスペルマ型、アンドランギニン型の3つの骨格を作り分けた。また、中間体を二電子または一電子酸化した後に環化させることで、ヌゴウニエンシン型と非天然物型の骨格構築にも成功した。これらはいずれも出発物質のトリプタミンより6–9工程で合成される。イボガ型、アスピドスペルマ型、アンドランギニン型骨格構築法を天然物に応用し、(–)-カサランチン、(±)-ビンカジホルミン、(±)-アンドランギニンの全合成を達成した。

N-プロパギルテトラヒドロカルボリンにZn(OTf)2を作用させ、異なる4種類のアルカロイド骨格への変換を報告した(2)。環化が進行した後に生成するアルケニル亜鉛をプロトンで捕捉する際、溶媒(t-BuOH)により促進されるため、ブレンステッド酸を用いない中性条件下で反応が進行する。また、非プロトン性溶媒の1,2-ジクロロエタンを用いた際、Zn(OTf)2がルイス酸として働いたカルボニルのエノール化が促進され、α-アルケニル化体が得られる。

β位にシアノ基を有するシクロへキセノンに立体選択的にアルケンおよびアルキンを導入し、6種類のセスキテルペン類にみられる三環式骨格の構築を報告した(3)。生成物が共役ジエン、ヒドロキシ基、シアノ基を有するため、さらなる化合物変換が容易であり、抗マラリア薬として知られるアルテミシニン誘導体の合成に応用された。また、合成した誘導体のトリパノソーマ(アフリカ睡眠病の原因)に対する生物活性評価により、既存の医薬品(エフロルニチン)を上回る抗トリパノソーマ活性を示す化合物を見いだした。

酵素反応を用いた天然物の全合成
多環性骨格を一挙に構築する酵素反応と基質や中間体を自在に改変できる有機合成を融合させ、サフラマイシン類の化学–酵素ハイブリッド合成プロセスの開発に成功した(4)。酵素SmfCを用いた実際の生合成経路で得られる環化体は、その後の化学的修飾が困難である。そこで、得られる環化体の化学的修飾を容易にすべく、チロシン誘導体と反応させるアルデヒドを3種類設計し、酵素反応を行った。それぞれで得られた環化体を数工程で変換し、サフラマイシンA、サフラマイシンY3のFmoc保護体、ジョルナマイシンAの全合成を達成した。

コメント&その他

  • 平間研での助手時代に、大石徹助手(現・九州大学教授)、井上将行助手(現・東京大学教授)らと共に、Ciguatoxin CTX3Cの世界初の全合成を達成している(5)
  • 面倒見が良く常に周囲をエンカレッジし、恩師である平間先生が卒業生に贈る言葉「熱心と野心と」を体現されている(6)
  • 釣りとスキーに情熱を燃やされている(6)
  • カラオケではTHE BLUE HEARTSを熱唱される。お気に入りは「TRAIN-TRAIN」と「リンダ リンダ」(6)

関連動画

関連文献

  1. (a)Mizoguchi, H.; Oikawa, H.; Oguri, H. Biogenetically Inspired Synthesis and Skeletal Diversification of Indole Alkaloids. Nature Chem. 2014, 6, 57–64. DOI: 1038/NCHEM.1798 (b)Mizoguchi, H.; Watanabe, R.; Minami, S.; Oikawa, H.; Oguri, H. Synthesis of Multiply Substituted 1,6-Dihydropyridines through Cu(I)-catalyzed 6-endo Cyclization. Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 5955–5963. DOI: 10.1039/c5ob00356c
  2. Yorimoto, S.; Tsubouchi, A.; Mizoguchi, H.; Oikawa, H.; Tsunekawa, Y.; Ichino, T.; Maeda, S.; Oguri, H. Zn(OTf)2-mediated Annulations of N-propargylated Tetrahydrocarbolines: Divergent Synthesis of Four Distinct Alkaloidal Scaffolds. Sci. 2019, 10, 5686–5698. DOI: 10.1039/c9sc01507h
  3. (a)Oguri, H.; Yamagishi, Y.; Hiruma, T.; Oikawa, H. Skeletal and Stereochemical Diversification of Tricyclic Frameworks Inspired by Ca2+-ATPase Inhibitors, Artemisinin and Transtaganolide D. Org. Lett. 2009, 11, 601–604. DOI: 10.1021/ol802621u (b)Oguri, H.; Hiruma, T.; Yamagishi, Y.; Oikawa, H.; Ishiyama, A.; Otoguro, K.; Yamada, H.; Ōmura, S. Generation of Anti-trypanosomal Agents through Concise Synthesis and Structural Diversification of Sesquiterpene Analogues. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 7096–7105. DOI: 10.1021/ja200374q
  4. (a)Koketsu, K.; Watanabe, K.; Suda, H.; Oguri, H.; Oikawa, H. Reconstruction of the Saframycin Core Scaffold Defines Dual Pictet-Spengler Mechanisms. Nat. Chem. Biol. 2010, 6, 408–410. DOI: 10.1038/nchembio.365 (b)Tanifuji, R.; Koketsu, K.; Takakura, M.; Asano, R.; Minami, A.; Oikawa, H.; Oguri, H. Chemo-enzymatic Total Syntheses of Jorunnamycin A, Saframycin A, and N‐Fmoc Saframycin Y3. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 10705–10709. DOI: 10.1021/jacs.8b07161
  5. Hirama, M.; Oishi, T.; Uehara, H.; Inoue, M.; Maruyama, M.; Oguri, H.; Satake, M. Total Synthesis of Ciguatoxin CTX3C. Science 2001, 294, 1904–1907. DOI: 1126/science.1065757
  6. 平間研時代を共に過ごした庄司先生(現・横浜薬科大学教授)、平井先生(現・九州大学教授)に情報提供いただきました。

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