岩田忠久(いわた ただひさ IWATA Tadahisa、1966年-)は、日本の化学者である。専門は高分子材料学、生分解性バイオマスプラスチック、高分子構造学。特に新規高性能バイオベースプラスチックおよび生分解性プラスチックの開発で顕著な業績をあげている。2020年現在、東京大学教授。
経歴
1966年2月 広島県・大竹市生まれ
1981年3月 山口県・岩国市立麻里布中学校卒業
1984年3月 千葉県・千葉市立千葉高校卒業
1989年3月 京都大学・農学部・林産工学科卒業
1991年3月 京都大学・大学院農学研究科・林産工学専攻・修士課程修了
1992年8月 フランス政府給費留学生として、フランス国立科学研究センター、植物高分子研究所に留学
1994年3月 京都大学・大学院農学研究科・林産工学専攻・博士後期課程修了
京都大学博士(農学)を取得
1995年4月 日本学術振興会・PD特別研究員
1995年10月 理化学研究所・基礎科学特別研究員
1996年10月 理化学研究所・高分子化学研究室・研究員
2001年8月 理化学研究所・高分子化学研究室・副主任研究員
2006年11月 東京大学・大学院農学生命科学研究科・生物材料科学専攻・高分子材料学研究室・助教授
2007年4月 同上 准教授
2012年3月 同上 教授
2013年4月 同上 生物材料科学専攻・専攻長(~2016年3月)
2018年4月 東京大学・総長補佐(~2019年3月)
2019年4月 東京大学・大学院農学生命科学研究科・研究科長補佐・国際交流室長
受賞歴
2000年5月 高分子学会 高分子研究奨励賞
2006年6月 繊維学会 学会賞
2010年2月 ドイツ・イノベーション・アワード ゴッドフリード・ワグネル賞
2014年3月 矢崎財団 矢崎学術賞
2014年4月 長瀬財団 長瀬研究振興賞
2019年5月 高分子学会 学会賞
Editor
Polymer Degradation and Stability (Elsevier)
研究業績
環境にやさしいバイオプラスチックの創製と構造制御による高性能化
流出したプラスチックによる環境破壊が問題視されている。一方で、限りある資源・エネルギー問題も併せて解決する必要がある。こうした背景から、地球環境に配慮しながら高機能な高分子材料の創製を目指すことが世界的な喫緊の課題となっている。そこで、再生可能資源であるバイオマスを原料とする「バイオマスプラスチック」と、環境中で微生物により二酸化炭素と水に完全分解する「生分解性プラスチック」に関する研究を、精力的にすすめている。
原料問題と環境保全問題のいずれにも貢献できる材料を、化学合成や生物合成、物性評価、構造解析、酵素分解など、化学の力を駆使しつつ幅広い観点から、基礎から応用まで幅広く研究を行い、持続可能な社会の構築に貢献することを目指している。
- バイオポリエステルの高性能繊維化と生分解性制御
- 高分子多糖類からの高機能熱可塑性ポリマーの開発と生分解性
- オールバイオマス複合化技術の開発
- 生分解性開始機能を有する生分解性プラスチックの開発
- 生分解性プラスチックの生分解性制御技術の開発
- 大型放射光を用いた生分解性バイオマスプラスチックの構造科学研究
関連動画
東大TV 第54回農学部公開セミナー「生き物が造り出す価値あるもの」 岩田忠久「未来を拓け!環境にやさしいバイオプラスチック」
2020年6月2日 第四回ケムステバーチャルシンポジウム「持続可能社会をつくるバイオプラスチック」より
関連文献
- Tadahisa Iwata: Biodegradable and Bio-Based Polymers: Future and Prospects of Eco-Friendly Plastics, Angewante Chemie International Eddition, 54, 3210-3215 (2015). DOI: 10.1002/anie.201410770
- 岩田忠久「高分子多糖類の特徴を活かした新しい高性能バイオプラスチックの創製」;応用糖質科学 第8巻 第2号 110-116(2018)
- 岩田忠久「プラスチックと人類の共存・共栄を目指してー生分解性プラスチックの観点からー」;繊維学会誌 第75巻 第10号, 532-537p(2019)