齊藤尚平(1982年–、東京生まれ)は、日本の化学者である。専門は構造有機化学、光化学、有機材料科学(液晶や高分子を含む)。現在、京都大学大学院理学研究科 准教授。
経歴
2010年 京都大学 博士(理学)取得 (大須賀篤弘 教授)
2010-2016年 名古屋大学物質科学国際センター 助教
2012-2016年 JSTさきがけ研究者「分子技術と新機能創出」領域1期生
2016年- 京都大学理学研究科 准教授
2016年- JSTさきがけ研究者「光の極限制御・積極利用と新分野開拓」領域2期生
受賞歴
2010 有機合成化学協会 第23回東ソー研究企画賞
2011 井上科学振興財団 第27回井上研究奨励賞
2012 IFOC-7 (The 7th International Forum on Chemistry of Functional Organic Chemicals) Best Poster Award
2013 第2回名古屋大学石田賞
2013 エヌエフ基金 研究開発奨励賞
2014 コニカミノルタ画像科学奨励賞
2014 Royal Society of Chemistry (RSC) & Chemical Society of Japan (CSJ), 8th PCCP Prize
2014 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2015 日本化学会進歩賞
2016 光化学協会奨励賞
2017 井上科学振興財団 第9回井上リサーチアワード
2018 日本液晶学会論文賞
2018 アジア光化学協会 APA Prize for Young Scientist 2018
研究業績
π共役分子は一般に剛直な芳香環や多重結合(おもにsp2 炭素)から構成されるため、必然的に剛直な構造をもつものが圧倒的に多い。このため、π 共役分子は狙った形のものを作りやすく物性面でも多くの強みをもつ。しかし,基本となる分子骨格が剛直であるということは無機材料に似て、構造の柔軟性に由来する物性の変換は難しく、静的な物性の発現に留まっていると考えることもできる。齊藤氏らは「π 共役骨格を動かす」という視点に基づき剛直性の利点を活かしつつ柔軟性を兼ね備えた一連のハイブリッドπ 共役分子を生み出し、これをFLAP(Flexible Aromatic Photofunctional systems)と名付けた。
このFLAP分子は周囲の環境に応じて異なる動的挙動を示すため、単一分子でありながらも薄膜・溶液・結晶中でそれぞれ青・緑・赤色の三原色発光を示すことが分かった。齊藤氏らはここで得られた知見を活かし、接着剤にFLAP分子を分散させることで接着剤のリアルタイムな硬化過程を観測することに成功している。また、近年ではFLAP分子の光励起による構造変化に着目することで、光で剥がせる接着剤の開発にも成功している。
名言集
分子を動かして人の心を動かす
ゲームチェンジ=ちゃぶ台返し
コメント&その他
関連動画
第二回ケムステVシンポジウム「光化学へようこそ!~ 分子と光が織りなす機能性材料の新展開 ~」より
関連文献
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- C. Yuan, S. Saito, C. Camacho, T. Kowalczyk, S. Irle, S. Yamaguchi, Chem. Eur. J., 2014, 20, 2193-220. doi: 10.1002/chem.201303955
- S. Saito, S. Nobusue, E. Tsuzaka, C. Yuan, C. Mori, M. Hara, T. Seki, C. Camacho, S. Irle, S. Yamaguchi, Nat. Commun., 2016, 7, 12094. doi: 10.1038/ncomms12094
- R. Kotani, H. Sotome, H. Okajima, S. Yokoyama, Y. Nakaike, A. Kashiwagi, C. Mori, Y. Nakada, S. Yamaguchi, A. Osuka, A. Sakamoto, H. Miyasaka, and S. Saito, J. Mater. Chem. C, 2017, 5, 5248-5256. doi: 10.1039/C7TC01533J
- T. Yamakado, T. Otsubo, A. Osuka, and S. Saito, Am. Chem. Soc., 2018, 140, 6245−6248. doi: 10.1021/jacs.8b03833
- Yamakado, S. Takahashi, K. Watanabe, Y. Matsumoto, A. Osuka, and S. Saito, Angew. Chem. Int. Ed., 2018, 57, 5438 –5443. doi: 10.1002/anie.201802185