周其林(Qi-Lin Zhou、1957年2月19日–)は中国の有機化学者である。南開大学教授
経歴
1982 蘭州大学 卒業
1987 中国科学技術院 上海有機化学研究所 博士号取得(Yao-Zeng Huang 教授)
1988-1990 華東理工大学(East China University of Science and Technology)博士研究員(Zheng-Hua Zhu 教授)
1990-1992 マックスプランク高分子研究所 博士研究員(Klaus Müllen 教授)
1992-1994 バーゼル大学 博士研究員(Andreas Pfaltz 教授)
1994-1996 テキサス トリニティ大学 博士研究員(Michael P. Doyle 教授)
1996-1997 華東理工大学 准教授
1997-1999 華東理工大学 教授
1999- 南開大学 教授
受賞歴
1997 Award for Outstanding Young Scientists
1999 Cheung Kong Scholar
2005 Prize for Creation in Organic Synthesis
2006 Yao-Zeng Huang Prize of Organometallics
2007 JSPS Fellowship Award
2007 Prize of Natural Science of Tianjin (1st class)
2008 PKU-Lilly Lectureship
2009 Asian Core Program Lectureship Award
2009 Membership in the Chinese Academy of Sciences
2010 Morningside Lectureship
2013 Fellow of Royal Society of Chemistry
2014 Scripps-Novartis Lecturer
2014 Prize of Natural Science of Tianjin (1st class)
研究概要
スピロ型キラル配位子の開発
主な業績として、剛直なC2対称骨格をもつ1,1’-スピロビインダンを主骨格としたスピロ型キラル配位子の開発が挙げられる。1,1′-スピロビインダン-7,7′-ジオール(SPINOL)を原料とすることで、下図に示した配位子をはじめ100種類以上の配位子を短工程で合成することに成功している。このうちいくつかの配位子はSigma-Aldrichなどから販売されている。
キラルスピロ型配位子を用いた触媒的不斉反応の開発
スピロ型キラル配位子を用いた水素化、炭素–炭素結合形成、炭素–ヘテロ結合形成などの様々な不斉触媒反応を開発している。特に、炭素–ヘテロ結合形成反応については、それまで報告例の限られていた遷移金属触媒を用いたカルベンのヘテロ原子–水素結合への不斉挿入反応を達成している[1]。
生物活性物質の不斉合成
上述の不斉反応を用いることで、ラセミ体の原料から動的速度論的光学分割(DKR: Dynamic Kinetic Resolution)を活用し、アルカロイドなど様々な生物活性物質のエナンチオ選択的合成を報告している。また、開発された触媒は高いTONおよびTOFを示すため、スケールアップや反応時間などの面から工業的実用化が期待できる[2]。
コメント&その他
- 南京の農村出身であり大学入試では物理学科の受験に一度失敗し、翌年の受験で化学科に入学した苦労人。
- 2013年には、中国の全国人民代表大会に選出され政界にも進出した。
- 論文を投稿する際には、実験者以外の学生にも必ず再現実験をさせる。
- 自身の優秀だと考える学生は、「コミュニケーション能力が高く、アクティブで創造力があり、勤勉である」学生。
関連文献
- Zhu, S.-F.; Zhou, Q.-L. Acc. Chem. Res. 2012,45, 1365. DOI: 10.1021/ar300051u
- Yan, P.-C.; Zhu, G.-L.; Xie, J.-H.; Zhang, X.-D.; Zhou, Q.-L.; Li, Y.-Q.; Shen, W.-H.; Che, D.-Q. Org. Process Res. Dev. 2013,17, 307. DOI: 10.1021/op3003147
- Huang, K.-L.; Guo, C.; Cheng, L.-J.; Xie, L.-G.; Zhou, Q.-L.; Xu, X.-H.; Zhu, S.-F. Adv. Synth. Catal. 2013, 355, 2833. DOI: 10.1002/adsc.201300452
- Guo, C.; Sun, D.-W.; Yang, S.; Mao, S.-J.; Xu, X.-H.; Zhu, S.-F.; Zhou, Q.-L. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 90. DOI: 10.1021/ja511422q