金城 玲(きんじょう れい、1979年11月27日–)は日本の有機化学者である。シンガポール南洋工科大学准教授。
経歴
2002 筑波大学 卒業
2005 筑波大学 修士号取得 (関口章 教授)
2005–2007 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2007 筑波大学 博士号(理学)取得 (関口章 教授)
2007–2011 カリフォルニア大学リバーサイド校 博士研究員 (Guy Bertrand 教授)
2008–2010 日本学術振興会海外特別研究員
2011–2017南洋工科大学 助教授
2017–2020 南洋工科大学 准教授
2020 南洋工科大学 教授
受賞歴
2009 第59回リンダウ・ノーベル賞受賞者会議(化学)参加者
2010 第26回井上研究奨励賞
2011 The Elite Nanyang Assistant Professorship Award
2012 有機合成化学協会研究企画賞 宇部興産研究企画賞
2014 SPMS Teaching Excellence Award 2014
2015 Asian Core Program Lectureship Award 2015 (Korea)
2015 Asian Core Program Lectureship Award 2015 (Japan)
2016 SPMS Young Researcher Award 2016
2016 Thieme Chemistry Journal Award 2016
2018 Asian Core Program Lectureship Award, to China
2019 Asian Core Program Lectureship Award, to Taiwan
2019 Young Investigator, Journal of the American Chemical Society
2019 FACS Distinguished Young Chemist Award 2019
2020 Young Investigator, Journal of the American Chemical Society
研究概要
p-ブロック元素を含む新規分子および結合の開発
ホウ素や、リン、ゲルマニウムを含む新規分子を設計している。カルベンの配位による化学種の安定化効果を利用した例が多い。窒素とホウ素を含む環状化合物である1,3,2,5-ジアザジボリニン1)、1,4,2-ジアザボロール2)、1,4,2,5-ジアザジボリニン3)は芳香族性を示すユニークな分子である。
そして、これらのp-ブロック元素を含む分子を利用した新規結合形成手法を数多く報告している。例えば、三配位ホウ素化合物1からジボレン(6)ジカチオン(B–B結合) 4a)やアザボラブタジエン(B, C, N-共役系) 4b)を構築できることを見出している。また、アザボロール2から非対称ジボレン(B=B結合) 5a)、アレンジボレン(C=B, B=B結合)5b)、末端ジボレン5c)を合成することに成功している。
コメント&その他
- 大学院生時代に、世界で初めてジシリン(ケイ素-ケイ素三重結合)の合成および単離に成功し(Science 2004, 305, 1755. DOI:1126/science.1102209)、大きな注目を集めた。
- 得られたジシリンのデータをしばらく秘密にして、研究室の報告会で初めて開示した。賞賛の嵐を期待したが、結果をすぐに報告しなかったことで責められた。
- 2003年度の日本化学会年会は別テーマで講演申し込みをしていたが、急遽内容を変更し、ジシリンの発表を行った。講演会場は立ち見が出るほどであった。
- 自身の研究室立ち上げの際、シンガポールの湿気のせいで試薬を失ってしまった。
- 沖縄県出身。幼少の頃に父親から三線を学んだ。大学では沖縄県人会に所属し、学園祭等でエイサー(沖縄の伝統芸能)の地謡(唄い手)として長年従事した。
関連文献
- a) Wu, D.; Kong, L.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. Nature. Commun. 2015, 6, 7340. DOI: 10.1038/ncomms8340 b) Wu, D.; Ganguly, R.; Li, Y.; Hoo, S. N.; Hirao, H.; Kinjo, R. Chem. Sci. 2015, 6, 7150. DOI: 10.1039/c5sc03174e
- Su, B.; Li, Y.; Ganguly, R.; Lim, J.; Kinjo, R. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 11274. DOI: 10.1021/jacs.5b07823
- Wang, B.; Li, Y.; Ganguly, R.; Hirao, H.; Kinjo, R. Nature. Commun. 2016, 7, 11871. DOI: 10.1038/ncomms11871
- a) Kong, L.; Lu, W.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 8623. DOI: 10.1021/jacs.6b04858 b) Kong, L.; Lu, W.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 14718. DOI: 10.1002/anie.201608994
- a) Lu, W.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 5047. DOI: 10.1021/jacs.7b02251 b) Lu, W.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 9829. DOI: 10.1002/anie.201704887 c) Lu, W.; Li, Y.; Ganguly, R.; Kinjo, R. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 1255. DOI: 10.1021/jacs.7b13068