[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

グァンビン・ドン Guangbin Dong

[スポンサーリンク]

グァンビン・ドン (Guangbin Dong、1981年4月15日-)は中国出身の有機化学者である。米シカゴ大学 教授(写真引用:Dong研究室ホームページ

経歴

2003 北京大学化学科 学士号取得
2009 スタンフォード大学 化学科 博士号取得(Barry M. Trost教授)
2009–2011 カリフォルニア工科大学 博士研究員(Robert H. Grubbs教授)
2011–2016 テキサス大学オースティン校 助教授
2016–現在 シカゴ大学 教授

受賞歴

2010 Reaxys PhD Prize, Runners-up, Elsevier
2011 CPRIT Award for Recruitment First-Time Tenure-Track Faculty Membe
2012 Herman Frasch Foundation Award in Chemical Research
2013 National Science Foundation CAREER Award
2014 Sloan Research Fellowship
2014 DuPont’s 2014 Class of Young Professors
2016 Eli Lilly Grantee Award
2017 Arthur C. Cope Scholar Award
2018 Kavli Fellow (NAS)
2018 Chan Memorial Award in Organic Synthesis
2018 Roche Chinese Investigator Award

研究概要

C–H結合活性化法の開発

遷移金属触媒を用いて、ケトンやアミンなどの基本的な官能基を足がかりとしたC–H結合活性化反応の開発を行なっている。Catellani反応に倣いノルボンネンを活用したC–H活性化反応や、基質と有機分子触媒から形成されるtransient directing group(一時的な配向基)を活用した手法を多く報告しており、化学当論量のdirecting groupを用いることなく、ケトンやアミン類のremote C–H活性化を達成している。(関連記事:飽和C–H結合を直接脱離基に変える方法

 

パラジウム-ノルボルネン触媒系によるハロベンゼンのオルト位アミノ化(引用:J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 18350–18353.)

酸化-共役付加のカスケード反応によるredox neutralなケトンβ位C-Hのアリール化(引用:J. Am. Chem. Soc. 2013135, 17747-17750.)

Bifunctional Catalystを用いたケトンα位の触媒的アルキル化(引用:Science 2014345, 68.

有機分子触媒とパラジウム触媒とを活用したアミンγ位のC–Hアリール化(引用:Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 9084.)

 

C–C結合活性化法の開発

熱力学的かつ速度論的に活性化が難しいC–C結合を金属触媒によって活性化し、新たな炭素骨格を構築する反応を報告している。彼らのグループではこのC–C結合を組み替える手法を便宜的に“cut and sew(裁縫)”と呼んでいる。従来のC–C結合活性化は歪みエネルギーの解消に依存するものが多かったが、近年、Dongらはほとんど歪みを持たないシクロペンタノンについてもC–C結合を活性化し、新たな炭素骨格を構築する手法を見出した (関連記事:安定な環状ケトンのC–C結合を組み替える)。

シクロブタノンのC–C活性化を経由したビシクロ骨格合成(引用:Nature Chem. 20146, 739.)

シクロペンタノンのC–C活性化を経由した新規骨格合成(引用:Nature 2016, 539, 546.)

 

天然物合成

これまでに、上記手法を鍵反応とする天然物合成が数例報告されている。

新マテリアル創出

芳香環が連なったグラフェンナノリボンのボトムアップ合成にも取り組んでいる。金属触媒反応を巧みに用いることによって、高分子化合物合成を可能にしている。

関連論文・書籍

  1. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 18350–18353. DOI: 10.1021/ja410823e
  2. J. Am. Chem. Soc. 2013135, 17747-17750. DOI: 10.1021/ja410389a
  3. Science 2014345, 68. DOI:  10.1126/science.1254465
  4. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 9084. DOI: 10.1002/anie.201604268
  5. Nature Chem. 20146, 739. DOI: 10.1038/nchem.1989
  6. Nature 2016, 539, 546. DOI: 10.1038/nature19849
  7. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 2376. DOI: 10.1002/anie.201611642
  8. Angew. Chem., Int. Ed. 201453, 10733. DOI: 10.1002/anie.201404802
  9. Chem. Eur. J. 2016, 22, 9116. DOI: 10.1002/chem.201602007
[amazonjs asin=”3662523973″ locale=”JP” title=”C-C Bond Activation (Topics in Current Chemistry)”]

関連リンク

ケムステ内関連記事

Orthogonene

投稿者の記事一覧

有機合成を専門にするシカゴ大学化学科PhD3年生です。
趣味はスポーツ(器械体操・筋トレ・ランニング)と読書です。
ゆくゆくはアメリカで教授になって活躍するため、日々精進中です。

http://donggroup-sites.uchicago.edu/

関連記事

  1. 楊井 伸浩 Nobuhiro Yanai
  2. Corey系譜β版
  3. テッド・ベグリーTadhg P. Begley
  4. 相良剛光 SAGARA Yoshimitsu
  5. エキモフ, アレクセイ イワノビッチ Екимов, Алекс…
  6. 八島栄次 Eiji Yashima
  7. ベン・クラヴァット Benjamin F. Cravatt II…
  8. クレイグ・クルーズ Craig M. Crews

注目情報

ピックアップ記事

  1. TBSの「未来の起源」が熱い!
  2. 田辺製薬、エイズ関連治療薬「バリキサ錠450mg」を発売
  3. 化合物太陽電池の開発・作製プロセスと 市場展開の可能性【終了】
  4. 山西芳裕 Yoshihiro Yamanishi
  5. オキソニウムイオンからの最長の炭素酸素間結合
  6. 糖鎖を直接連結し天然物をつくる
  7. 化学とウェブのフュージョン
  8. ヒストリオニコトキシン histrionicotoxin
  9. 総合化学大手5社、4-12月期の経常益大幅増
  10. ハネウェル社、アルドリッチ社の溶媒・無機試薬を販売へ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年3月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP