スナップタグ(SNAP-tag)は、特定のタンパク質だけを化学標識したいときに、目印として融合発現させる形で使われるタンパク質タグの一種である[1,2]。
細胞動態や機能を知りたいタンパク質(protein of interest, POI)に蛍光タンパク(GFPなど)を発現させる形で可視化する手法は、生命科学を劇的に発展させた。しかしながらGFPのサイズが大きい(約27kDa)ため、融合タンパクの機能がしばしば影響を受けてしまう。また、ラベル化の時期や蛍光波長をコントロール出来ないため、経時変化の追跡にも向いていない。
この問題解決を意図して、POIと化学試薬を特異的に反応させるタンパク質タグが種々開発されている。
SNAP-tagはその目的に活用される一つである。もともとは自殺酵素であるヒトO6-alkylguanine-DNA alkyltransferase (hAGT)を改変して作られている。hAGTはDNAアルキル化を修復する目的で存在している酵素だが、それを配列改変させて人工基質に対する反応性を向上させ、天然基質(アルキルグアニンDNA)への反応性を失わせている。
SNAP-tagに対してはベンジルグアニン誘導体が特異的反応基質となり、活性中心のチオールと共有結合を形成する形で標識が達成される。
類縁技術としてクリップタグ(CLIP-tag)[3]が知られている。こちらはベンジルシトシン誘導体と反応するため、SNAP-tagと直交的に用いることが出来る。
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関連論文
- Keppler, A.; Gendreizig, S.; Pick, H.; Vogel, H.; Johnsson, K. Nat. Biotechnol. 2003, 21, 86. doi:10.1038/nbt765
- Keppler, A.; Pick, H.; Arrivoli, C.; Vogel, H.; Johnsson, K. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101, 9955. doi:10.1073/pnas.0401923101
- Gautier, A.; Juillerat, A.; Heinis, C.; Correa, Jr, I. R.; Kindermann, M.; Beaufils, F.; Johnsson, K. Chem. Biol. 2008, 15, 128. doi: 10.1016/j.chembiol.2008.01.007
- “化学プローブのデザイン・合成によるタンパク質機能の可視化ツール” 水上進、菊地和也、生化学 2010, 82, 21.
- ”細胞内タンパク質を可視化するタグ‒蛍光プローブシステム” 野村 渉,玉村 啓和 J. Jap. Biochem. Soc. 2017, 89, 115. doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890115
- “Imaging proteins inside cells with fluorescent tags”. Crivat, G.; Taraska, J.W. Trends in Biotechniol. 2012, 30, 8. doi:10.1016/j.tibtech.2011.08.002