従来のプロテオミクス研究では、タンパク質の存在量を測定することに主眼が置かれていた。この結果として、それぞれのタンパク質が有する活性については、間接的な推定を行うことしかできなかった。
標的タンパク質の存在量ではなく、活性を指標にしたプロテオミクス研究法を活性ベースタンパク質プロファイリング(Activity-Based Protein Profiling, ABPP)と呼ぶ。
タンパク質またはmRNAの存在量に依らず、酵素活性部位のavailabilityを直接見積もれることがABPP法の利点である。 たとえばある疾患における酵素活性化の有無を調べたり、酵素の阻害剤解析などに応用することができる。セリンプロテアーゼやメタロプロテアーゼなど、内因性阻害剤としばしば相互作用したり、不活性チモーゲンとして存在するような酵素群の解析においては特に有効で、従来型プロテオーム解析よりも有益な情報が得られる。(冒頭図は論文[1b]より引用)
ABPP用プローブについて
ABPP用プローブは、「反応性基」と「タグ」の2要素で構成されている。選択性を高める官能基を含むこともある。
「反応性基」は活性型酵素の活性部位に対して共有結合阻害を行える反応性官能基が設計される。 「タグ」は、レポーター(蛍光団など)、アフィニティラベル(ビオチンなど)、Click反応基(アルキン・アジドなど)などとして設計される。
ABPPプローブと共有結合しうるタンパク質は、すなわちプロテオーム内の活性な酵素である。これはプロテオミクス研究で用いられる汎用的手法、すなわちアフィニティカラムによる濃縮・酵素断片化を経たLC-MS/MS法、蛍光イメージング、ウェスタンブロット法などで解析される。
参考文献
- Review: (a) Speers, A. E.; Cravatt, B. F. ChemBioChem 2004, 5, 41. DOI: 10.1002/cbic.200300721 (b) Willems, L. I.; Overkleeft, H. S.; van Kasteren, S. I. Bioconjugate Chem. 2014, 25, 1181. DOI: 10.1021/bc500208y (c) Niphakis, M. J.; Cravatt, B. F. Ann. Rev. Biochem. 2014, 83, 341. DOI: 10.1146/annurev-biochem-060713-035708 (d) Sanman, L. E.; Boygo, M. Ann. Rev. Biochem. 2014, 83, 247. DOI: 10.1146/annurev-biochem-060713-035352 (e) Jessani, N.; Cravatt, B. F. Curr. Opin. Chem. Biol. 2004, 8, 54. DOI: 10.1016/j.cbpa.2003.11.004
- (a) Kam, C. M.; Abuelyaman, A. S.; Li, Z.; Hudig, D.; Powers, J. C. Bioconjugate Chem. 1993, 4, 560. DOI: 10.1021/bc00024a021 (b) Abuelyaman, A. S.; Hudig, D.; Woodard, S. L.; Powers, J. C. Bioconjugate Chem. 1993, 4, 560. DOI: 10.1021/bc00029a004
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