光増感剤(photosensitizer)とレーザーを用いる治療法。主に癌の治療に用いられている。
癌の治療法としては、これまで外科手術、放射線治療、投薬治療が用いられて来た。PDTは、正常細胞を傷つけずに癌細胞のみを破壊する、より高い選択性を持つことが期待されている。
(図は、文献1より抜粋、筆者改変)
PDTの利点
- 外科手術が不可能な場所の病巣にも適応可能
- 高齢であることや、体力が無いことにより外科手術、放射線治療、投薬治療に耐えられない人にも適応可能。
- 光増感剤(photosensitizer)のみでは、臓器に毒性が無い。(化学療法では、吐き気、免疫機能の低下などの副作用がある。また、放射線治療では、正常細胞に炎症、傷害を起こすという副作用がある。)
- 非侵襲的治療法である。
- 膀胱癌、食道癌、頭、首、脳腫瘍、肺癌、皮膚癌、前立腺癌、乳癌、腹腔癌などの固形癌に適応可能である。
- 癌のみでなく、心臓、皮膚、眼の疾患や伝染病などへの応用も研究されている。
- 静脈注射または腹腔内投与できる。
PDTのメカニズム
光増感剤(PS)は、特定の波長の光を照射される事により、基底状態(S0)より一重項状態(S1)へと励起される。その後、項間交差により三重項状態(S3)となり、酸素にエネルギーを与えながら基底状態(S0)へと戻る。このときエネルギーを受け取った酸素は、一重項状態(一重項酸素)となり、種々の活性酸素種を発生させる。この活性酸素種が癌細胞を攻撃すると考えられている。
(図は、文献1より抜粋)
実際の治療では、光増感剤(photosensitizer)投与後、血中濃度が最大となった時に、患部に対して光照射が行われる。光増感剤(photosensitizer)は、基底状態に戻ると毒性を示さないと考えられている。
光増感剤(photosensitizer)とその歴史
初めて光線力学療法の現象が観測されたのは、1900年にRabbらによってである。
光線力学療法の概念が出来たのは1903年であり、eosinが用いられ、主に皮膚がんの患者らに適応された。
現代では、光線力学療法において初めて実用化された光増感剤(photosensitizer)は、photofrinと呼ばれるヘマトポルフィリン誘導体(HpD)である。
ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)は有用な光増感剤(photosensitizer)であるが、以下のような問題点がある。
吸収波長があまり超波長ではなく(600 nm程度)であり、吸収も弱い。そのため、体内深部にある病巣には適応不可能である。また、光過敏症等の副作用もある。
これらの欠点を克服した第二世代光増感剤(photosensitizer)が登場した。それは、Levulan, Radachlorin, Visudyne, Foscan等である。