[スポンサーリンク]

chemglossary

国連番号(UN番号)

[スポンサーリンク]

危険な化学品を飛行機や船を使って輸送することは、現代では日常的に行われていることである。安全に化学品を運ぶために危険物を分類したものが国連番号(United Nations Number, UN No.)であり、その番号ごとに正しい容器や梱包方法が示されている。

国連番号とは

国連番号とは国連経済社会理事会に設置された危険物輸送専門家委員会の国際連合危険物輸送勧告の中で、輸送上の危険性や有害性がある化学物質に付与された番号である。下記の大きな分類番号があるが、一つ一つの国連番号は、制定された順に番号が付加されるため前後の番号と関連性がない。また、単一の化合物だけなく、爆弾(砲用完成弾:UN0006)やリチウムイオン電池(UN3480か3481)も分類されている。

  • 1:火薬類
  • 2:ガス
  • 3:引火性液体
  • 4:可燃性固体
  • 5:酸化性物質
  • 6:毒物及び伝染性病原体等
  • 7:放射性物質等
  • 8:腐食性物質等
  • 9:有害性物質

実際例

UN番号は、該当危険品のMSDSに記載されていることが多い。例えばn-ヘキサンは、UN1208に分類されていて、1L未満の輸送の場合、Y341という容器のルールで輸送しなくてはならない。Y341は、ガラス、プラスチック、陶器などの容器で外装は、ドラム缶やプラスチック容器で梱包しなくてはならない。また危険物のラベルは、「G」を張る必要がある。

このように有機溶媒一つとっても細かくルールが定められている。

積載禁止品と普通品

次にn-BuLi (1.6 M)だが、これはUN3394に分類されている。これは、旅客機(乗客も乗る飛行機)も旅客機以外の航空機(FedexDHLが独自に運用している飛行機)のどちらにも積載禁止であるため、飛行機では輸送できない。アルカリ金属懸濁物はUN1391は、旅客機には積載禁止であるが、旅客機以外の航空機には1L未満なら積載できる。液体の反応性が高い危険物は総じて、航空機に積載できない。n-BuLiが旅客機に積載されていたら落ち落ち機内食を食べていられないだろう。

また、MSDSでUN番号が非該当の化学品の場合危険物ではないので、普通の貨物として取り扱うことができる。しかし、UN番号と輸出入申告は別物なので、化合物と使用用途を正しく税関に申告する必要がある。

虚偽の申告事件

2000年3月には、北京発クアラルンプール行きの旅客機内で貨物室で腐食性の液体が流出し貨物室、配電盤、ランディングギアが腐食した。さらに、到着後の積み下ろし作業員五人もけがをした。航空会社はダメージを受けた航空機を修理しようとしたが、高額であったため廃棄した(A330-200の2016年のカタログ価格:2億3150万ドル)。原因は、当該化学物質の無申告且つ梱包不良による液漏れで、危険物でない固体の8-キノリノールと申告していたが、実際は腐食性の危険物、塩化オキサリルだった。

このように、正しく申告し適切な梱包を行わないと取り返しのつかないことになってしまう。

航空危険物規則書

危険物の航空輸送の詳しいルールが関われた本が航空危険物規則書であり、毎年更新されて出版されている。

実際に化学品を輸出する時

実際に、化学品を海外の共同研究先に輸送する場合には、まず運送会社(郵便局では危険物の国際輸送を行っていない)に相談することが必要である。その際に、MSDSの情報をもとに梱包方法などを相談し発送する。

関連書籍

[amazonjs asin=”4873266718″ locale=”JP” title=”危険物輸送に関する勧告 モデル規則 19改訂版”]

関連リンク

  • 国連番号: wikipedia
  • 国連番号のリスト一覧と検索:UN番号の一覧と詳細規則が記載されている
  • IATA:国際航空運送協会、International Air Transport Associatioは貨物輸送を含めた航空にかかわる基準やルールを制定している業界団体で、航空危険物規則書の作成や危険物取扱認定セミナーを行っている。
Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 溶媒の同位体効果 solvent isotope effect
  2. ランタノイド Lanthanoid
  3. ケージド化合物 caged compound
  4. mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)
  5. ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects
  6. 蓄電池 Rechargeable Battery
  7. メタンハイドレート Methane Hydrate
  8. 秘密保持契約(NDA)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 論文コレクター必見!WindowsでPDFを全文検索する方法
  2. フェニル酢酸を基質とするC-H活性化型溝呂木-Heck反応
  3. 「マイクロリアクター」装置化に成功
  4. 「ヨーロッパで修士号と博士号を取得する」 ―ETH Zürichより―
  5. そこのB2N3、不対電子いらない?
  6. Grubbs第一世代触媒
  7. 酵母菌に小さなソーラーパネル
  8. ハンスディーカー反応 Hunsdiecker Reaction
  9. マテリアルズ・インフォマティクス活用検討・テーマ発掘の進め方 -社内促進でつまずやすいポイントや解決策を解説-
  10. 深紫外光源の効率を高める新たな透明電極材料

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー