秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)とは研究活動の中で重要な契約の一つで、お互いの秘密情報を外に漏らしませんという契約である。企業同士や企業と大学など、組織同士で締結する。
秘密保持契約とは
単一の組織内で研究を行う場合には情報が外に漏れることはないが、研究活動を広げるために共同研究先と交渉する場合、製品の詳細を開示して売り込んだりする場合には、自分たちの秘密情報(製品の構成や製造方法、応用方法)を相手に示さないといけない。しかし、相手に教えてしまうとその相手がほかの人に自分の秘密情報を漏洩してしまう可能性がある。その漏洩を防ぐために秘密を保持しましょうという契約が秘密保持契約である。
単にお互いの秘密を保持しましょうとするだけでは契約書にならないので、下記の条項のポイントについて双方が理解し同意することが重要である。
基本は、誰がどんな秘密情報をどれくらいの期間秘密にし、問題が起きたらどこの裁判所に行くかということである。大学では、誰=研究室メンバーだが、会社になると研究チームだけでなく上司、役員、グループ会社など多くの人が関わってくる。どんな=特定の研究の詳細であり、昼ご飯のメニューなどは秘密情報ではない。どれくらいの期間=数年間が一般的で場合によっては契約を延長する。どこの裁判所=日本の組織同士なら日本のどこかの裁判所になり、海外とのNDAならば海外の裁判所になることもある。
(1)契約書の表題
(2)秘密保持契約締結の事実と情報開示の目的
(3)秘密情報の定義
(4)秘密保持義務
(5)成果の帰属
(6)検査権と差し止め請求
(7)有効期間
(8)準拠法
(9)裁判管轄
企業A、企業B、大学などのような三者で契約を結ぶ場合は、三者間秘密保持契約(3 way NDA)となる。日本の契約書では、甲と乙と呼ばれる略称が使われるが三者の場合には、甲と乙に加えて丙が使われる。
活躍する場面
企業と大学の場合には、共同研究を行う際の研究テーマの議論などを行う場合に締結が必要である。また、工場や研究所の見学会で企業秘密を知りうる場合にも参加者にNDAの締結を求める場合がある。なお共同研究を行うための契約書は、共同研究契約書( Joint Research and Development Agreement)という別の契約書となるためNDAではカバーされていない。
締結の手順
基本的には、最初に雛形をもとにどちらかが作ってそれを相手方に送って修正する。条文が出来上がったら、お互いの契約者が日時とサインを書いて複数枚書いて、それぞれがどちらのサインが書かれているオリジナルの文書を保管する。
注意事項
- 企業にも大学にも知的財産部、産学連携部などに契約を専門とする人がいる。インターネット上には雛形がいくつも存在するが、勝手に作らずに担当部署に相談して契約書を作る必要がある。特に大学における契約者は、直接の担当者=研究室の教員となる場合と契約者が部局の代表となる場合があり、確認が必要である。
- 秘密保持に身分は関係がないので学生もしっかりと遵守しなくてはならず、友達などに情報を絶対に漏らしてはならない。最悪の場合は損害賠償を請求される。
学生が契約の締結に関わることはほぼないが、会社に入ると関わることが多々ある。口約束はビジネスでは通用せず、近年では特に契約書の理解と締結が重要になっている。
関連書籍
[amazonjs asin=”4502174114″ locale=”JP” title=”秘密保持契約の実務―作成・交渉から平成27年改正不競法まで”] [amazonjs asin=”4798016144″ locale=”JP” title=”秘密保持契約がよ~くわかる本 (ポケット図解)”]関連リンク
- 秘密保持契約: wikipedia
- 東北大学産学連携機構:NDAの基本的事項がまとめられている