[スポンサーリンク]

chemglossary

A値(A value)

[スポンサーリンク]

A値(A value)とは1955年にWinsteinとHolnessにより報告された一置換シクロヘキサンにおけるeq-置換シクロヘキサンとax-置換シクロヘキサン間の平衡のギブス自由エネルギーの変化量(差)。

シクロヘキサンの配座異性体間の存在割合や置換基の立体的な影響を示す指標の1つ。一置換から拡張して多置換シクロヘキサンの置換基の影響についても考えることができる。また、反応の選択性への効果を考える指標ともなる。別名Winstein–Holness A valueとも呼ばれる。
あくまで平衡のギブス自由エネルギーを示すものであるため、立体的な影響を考える上での指標とはなるが、厳密にはシクロヘキサン周りの立体的な影響を表し、置換基自体の嵩の”大きさ”を示す訳ではない。
C(CH3)3の場合のA値は4を超えるが、テーブル内に示したTMS基は2.5であることからも置換基の嵩の大きさを示すわけではないことがわかる(この場合はC–Siの結合距離がC–Cに比べて長く、結果的にA値は小さくなる)。

参考文献

  1. B. S. Winsten, N. J. Holness, J. Am. Chem. Soc.195577, 5562. DOI: 10.1021/ja01626a037
  2. F. R. Jensen, C. H. BushWeller, B. H. Beck, J. Am. Chem. Soc.196891, 344. DOI: 10.1021/ja01030a023
  3. E. L. Eliel, H. Satici, J. Org. Chem.199459, 688. DOI: 10.1021/jo00082a036
  4. C. H. Marzabadi, J. E. Anderson, J. Gonzalez-Outeirino, P. R. J. Gaffney, C. G. H. White, D. A. Tocher, L. J. Todaro, J. Am. Chem. Soc.2003123, 15163. DOI: 10.1021/ja035936x
  5. https://en.wikipedia.org/wiki/A_value

gladsaxe

投稿者の記事一覧

コアスタッフで有りながらケムステのファンの一人。薬理化合物の合成・天然物の全合成・反応開発・計算化学を扱っているしがない助教です。学生だったのがもう教員も数年目になってしまいました。時間は早い。。。

関連記事

  1. リード指向型合成 / Lead-Oriented Synthes…
  2. メビウス芳香族性 Mobius aromacity
  3. N-ヘテロ環状カルベン / N-Heterocyclic Car…
  4. コールドスプレーイオン化質量分析法 Cold Spray Ion…
  5. 熱分析 Thermal analysis
  6. 多重薬理 Polypharmacology
  7. 核酸合成試薬(ホスホロアミダイト法)
  8. メタンハイドレート Methane Hydrate

注目情報

ピックアップ記事

  1. エキノコックスにかかわる化学物質について
  2. 白い粉の正体は…入れ歯洗浄剤
  3. 元素手帳 2018
  4. NBSでのブロモ化に、酢酸アンモニウムをひとつまみ
  5. 5分でできる!Excelでグラフを綺麗に書くコツ
  6. ノバルティス、後発薬品世界最大手に・米独社を買収
  7. 論文がリジェクトされる10の理由
  8. 次世代シーケンサー活用術〜トップランナーの最新研究事例に学ぶ〜
  9. エチオ・リザード Ezio Rizzardo
  10. ポリセオナミド :海綿由来の天然物の生合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

野々山 貴行 Takayuki NONOYAMA

野々山 貴行 (NONOYAMA Takayuki)は、高分子材料科学、ゲル、ソフトマテリアル、ソフ…

城﨑 由紀 Yuki SHIROSAKI

城﨑 由紀(Yuki SHIROSAKI)は、生体無機材料を専門とする日本の化学者である。2025年…

中村 真紀 Maki NAKAMURA

中村真紀(Maki NAKAMURA 産業技術総合研究所)は、日本の化学者である。産業技術総合研究所…

フッ素が実現する高効率なレアメタルフリー水電解酸素生成触媒

第638回のスポットライトリサーチは、東京工業大学(現 東京科学大学) 理学院化学系 (前田研究室)…

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー