分子がどのような立体配座をとっているか、なぜそのような配座が安定なのか、いくつかの配座が存在する場合どのような割合で存在するか、配座間の相互変換はどのような経路で起こり、そのエネルギー障壁はどのくらいか・・・などなど、分子の立体配座(conformation)について考察することはは有機化学に足を踏み込めば、避けては通れない。
この配座を表記する方法として提唱されている一つが、Klyne-Prelog表記法である(提唱者であるWilliam KylneとVlarimir Prelogの両名にちなむ)。
概要
Klyne-Prelog表記法は、ねじれ角(二面角)の大きさで分類し、一般的に分子配座を表記可能な方法である。下記のルールに従う。
① 注目するX-Y結合の両端から、二面角を決めるために使う原子団を図1の基準に従って選ぶ。1)の順位付けはCahn-Inglod-Prelog則に従って行う。
② ①で選んだ二つの原子団を基準とし、二面角を調べる。
具体的には、Newman投影式で表記したとき、手前側の原子団を時計の12時の位置においた場合、もう片方の原子団がどの位置に来るかで二面角を決定する。
③この二面角値に従い、配座を8種類に分類する(図2)。
注1:時計回りを+、反時計回りを-の符号にする。ねじれ角がちょうど0°あるいは180°の場合は符号をつけない。注2:ちょうど±90°の場合はこの方法では表記できない。
実例
例えば図3のような化合物を考えてみる。
①基準となる原子団を選ぶ。
CIP則に基づくと、左の炭素原子ではBr、右ではClとなる。
②Newman投影式で、左の原子団(この場合はBr)を時計の12時の方向に置く。
③右の原子団(この場合はCl)の位置に従って配座を分類する。
各立体配座は、それぞれ図4のように表記される。
(2000/6/8 ブレビコミン 2016/2/11加筆修正 by cosine)
(※以前公開していた記事をブログに移行したものです)
関連文献
- ”Description of steric relationships across single bonds.” Klyne, W.; Prelog, V. Experientia 1960, 16, 521–23.
- “Basic terminology of stereochemistry” Moss, G. P. Pure Appl. Chem. 1996, 68, 2193. DOI: 10.1351/pac199668122193
関連書籍
[amazonjs asin=”B01BH2EX02″ locale=”JP” title=”Guide to Stereochemistry: A Detailed Guide (English Edition)”][amazonjs asin=”0198792751″ locale=”JP” title=”Organic Stereochemistry (Oxford Chemistry Primers)”][amazonjs asin=”4807904841″ locale=”JP” title=”大学院講義 有機化学〈1〉分子構造と反応・有機金属化学”]