in vitro結合アッセイでヒットした化合物を用い、細胞・動物などのin vivo系で薬理活性測定を行うと、しばしば非常に弱い薬効しか示さないことがある。こういった場合には、膜透過性や代謝安定性など、標的結合能以外の面で化合物に問題があることが多い。
化合物が経口医薬品となるためには、消化器官から吸収され、細胞膜を通過し、細胞内に到達して効果を発揮する必要がある。
Lipinskiらは1997年に、医薬候補品リストと通常の有機化合物リストの比較を行い、経口医薬品になりやすい化合物の化学特性を「Rule of five」としてまとめ上げた[1]。見ての通り、5の倍数にちなむ、創薬化学者が簡便に記憶し用いやすい法則となっている。下記のうちいずれか2つに当てはまらない化合物は吸収が悪く、最終的に医薬品になりづらいとされる。この指針が示すとおり、低分子医薬の利点を最大限享受するには、化合物構造に適度な脂溶性と比較的小さな分子量が要請される。
- 水素結合ドナー(OH, NH)が5個以下である。
- 水素結合アクセプター(N, Oなど)が10個以下である。
- オクタノール-水 分配係数(LogP)が5以下である。
- 分子量が500以下である。
しかしもちろん例外はあり、化合物特異的なトランスポーターがある場合や、抗菌薬、抗生物質、ビタミン、強心配糖体などはRule of fiveに適合しないとされている。経口投与性を持つ医薬品でも、Rule of fiveから外れるものは実在する。
参考文献
- (a) “Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings” Lipinski, C. A.; Lombardo, F.; Dominy, B. W.; Feeney, P. J. Adv. Drug. Delivery Rev. 1997, 23, 3. doi:10.1016/S0169-409X(96)00423-1 (b) “Lead- and drug-like compounds: the rule-of-five revolution”. Lipinski, C. A., Drug Discovery Today: Technologies 2004, 1, 337. doi:10.1016/j.ddtec.2004.11.007