ビオチンは、本来ビタミンの1種で、ある種の酵素タンパク質の補酵素として機能する成分のことです。この化合物にはビタミンとしての機能とは別に、アビジンと呼ばれるタンパク質と強力に結合する性質があります。ビオチンがアビジンにとらえられる親和の強さは、抗原抗体反応の数百万倍にも及びます。その強力さは、アビジンを豊富に含む卵白を、実験動物に大量投与するだけで、ビオチン欠乏状態にできるほどです。
自然にない物質を人工に設計し生命現象を明らかにする化学生物学の分野で使われてきた歴史が、ビオチンにはあります。生理活性物質の標的タンパク質の精製や、細胞膜タンパク質であることの証明など、その活用例は枚挙にいとまがありません。
天然物リガンド分子のビオチン標識による標的タンパク質の単離
ビオチンのカルボキシル基は、アビジンがビオチンを認識する上で、あまり関係していません。この部分にアミド結合を介して、他の機能モジュールを構築できます。例えば、リンカーをはさんで生理活性物質をつなげることでケミカル標識に用いることができます。上手く条件を調整できれば、アビジンをビーズに固定したアフィニティカラムで、標的タンパク質を分画できます。
タンパク質のアフィニティー精製では歴史が長い
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