水分解(water-splitting)とは、水分子を分解して水素分子と酸素分子を生成させる反応のことです。化学量論量(モル比2:1)に分解する反応を、特に水の完全分解(stoichiometric water-splitting)と呼ぶこともあります。
世界に事実上無尽蔵に存在する水を原料とし、燃料源となる水素ガスを造れる反応です。水素ガスは燃焼の際に水以外の廃棄物を一切出しません。このため既存の化石燃料とは異なる、再利用可能なクリーン燃料(reusable clean energy)となることが期待されています。
来たるべきエコ社会に向けて、水分解は実用化が待たれる最重要反応であるとされています。水を電気分解すること自体は、小中学校などで行われている有名・基礎的な実験です。しかし電気で水分解を起こし、水素を造るという案は、最終目的を考えると全くの本末転倒です。そもそも電気というエネルギー形態自体、化石・原子力燃料などの別種のエネルギー源を精錬する過程を経て作られています。電気生成・送電過程でのロスは避けられないことに加え、結局燃料を使ってCO2や廃棄物を発生させることになるわけですから、何の解決にもならないわけです。
水分解を意味ある形で活用するためには、必然、別の反応促進エネルギー源が必須になります。一般には、太陽光(可視光)を活用することが理想型とされています。
すなわち現在では、可視光で水分解を進行させる光触媒の実用化を究極的目標とし、世界中の研究者が開発競争に取り組んでいます。この光触媒は、人間活動全てにインパクトを与える技術となりうるため、最も価値の高い研究課題の一つとされています。必然、多くの国で巨額の研究費が、現在進行形で投入されています。
しかし、光触媒として報告が多くある紫外光使用に比べ、可視光はエネルギー自体がそれほど強くなく、水分解を進行させるにはよほど効率に優れたシステムを作らないといけません。実用化に向けては、これからいくつものブレイクスルーが必要になってくるでしょう。