振動円二色性スペクトル(VCD Spectrum)は、赤外領域を利用した円二色性スペクトルのことです。
左円偏光と右円偏光に対する吸光度の差を波長に対してプロットしたものが円偏光二色性(CD)スペクトルですが、紫外・可視領域(UV-Vis)を利用するCD法では吸収帯が幅広く、その用途が限られてきます。
一方、VCDスペクトルは赤外領域を利用します。このため、分子振動状態の遷移に基づく吸収体が数多く観測され、豊富な情報が得られます。赤外線領域の測定といえばIRスペクトルが代表的ですが、VCDスペクトルの場合、鏡像異性体のスペクトルが異なるため光学活性体の測定において、様々な情報が得られます。
例えば結晶化させることができず、X線構造解析を利用することができない光学活性物質の絶対配置の決定が可能です。また、 分離や誘導体合成をせず、1%ee以下のエナンチオマー過剰率測定をすることや、キラル分子からの赤外発色団スペクトルの取得、現在進行形の反応中での光学純度モニタリグなども可能です。さらに、溶液状態の分子の配座も決定することもできます。
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