[スポンサーリンク]

chemglossary

光学分割 / optical resolution

[スポンサーリンク]

人為的に合成したラセミ体や非ラセミ体から、(+)と(-)の純エナンチオマーを分離することを光学分割(optical resolution)といいます。

不斉環境下に光学活性体を合成する不斉合成(asymmetric synthesis)とは相補的なものです。不斉合成によって得られた不完全な光学活性化合物(非ラセミ体)から、光学分割法を用いて純粋なエナンチオマーを得たり、逆に光学分割法によって得られたエナンチオマーをさらに不斉合成に用いることは日常茶飯事です。

ただし、それまで合成してきた化合物の半分が不要になるという本質的問題点を抱えています。多段階合成においては、両エナンチオマーが利用可能な合成経路や、再利用法をうまく考えていくことが有効活用に必要不可欠となります。

光学分割法は、以下の3つに大別することができます。

I ) クロマトグラフィ法

光学活性な固定相を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって分割すること。これは両エナンチオマーと固定相の、わずかな相互作用の差異を利用しています。

 II ) 酵素法

基質は限られますが、酵素は相当に高い不斉識別能を持ちます。これを利用し、ラセミ体の片方のエナンチオマーだけを選択的に反応・変換させ、分離することで光学的に純品の化合物を得ることができます。最近では不斉触媒研究の進展により、人工触媒でも類似の方法が行えるような例が増えてきました。詳しくはこちら

III ) 結晶化法

優先結晶法とジアステレオマー法、包接錯体法があります。ジアステレオマー法が現実的には最もよく使われます。
キラルな酸/塩基とジアステレオマー塩を生成させ、片方のジアステレオマーだけを優先的に結晶化させる条件を用いることで光学分割を行います。酸を光学分割する場合はアルカロイド(キニーネ、ブルシンなど)、塩基を光学分割する際はカルボン酸(酒石酸など)がもちいられます。

 

関連文献

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4882318369″ locale=”JP” title=”キラルテクノロジー (CMCテクニカルライブラリー)”][amazonjs asin=”4882319055″ locale=”JP” title=”キラルテクノロジーの進展 (CMCテクニカルライブラリー)”][amazonjs asin=”4864280320″ locale=”JP” title=”光学活性医薬品開発とキラルプロセス化学技術―法規制・特許・品質管理・工業化の留意点”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 点群の帰属 100 本ノック!!
  2. リード指向型合成 / Lead-Oriented Synthes…
  3. 原子分光分析法の基礎知識~誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-O…
  4. コンビナトリアル化学 Combinatorial Chemis…
  5. 重医薬品(重水素化医薬品、heavy drug)
  6. Spin-component-scaled second-ord…
  7. 光薬理学 Photopharmacology
  8. 金属-有機構造体 / Metal-Organic Framewo…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 嘉部 量太 Ryota Kabe
  2. デルゴシチニブ(Delgocitinib)のはなし 日本発の非ステロイド系消炎外用薬について
  3. ロナルド・ブレズロウ Ronald Breslow
  4. Zachary Hudson教授の講演を聴講してみた
  5. 配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成
  6. 「ラブ・ケミストリー」の著者にインタビューしました。
  7. 【追悼企画】水銀そして甘み、ガンへー合成化学、創薬化学への展開ー
  8. 第66回「物質の宇宙:未知の化合物を追い求めて」山本 隆文 准教授
  9. 亜鉛クロロフィル zinc chlorophyll
  10. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー