島津製作所の創業から現在に至るまでの歴史を示す資料館で、数々の発明品が展示されている。第10回化学遺産認定において、資料館の建物、機器、資料類が化学遺産として認定された。
マップ
利用案内
- 入館料:大人:300円 中高生:200円 小学生以下:無料 (20名以上は2割引)
- 開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日:水曜日(祝日の場合は開館、振替休日なし)、年末年始
2020年6月28日現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため臨時休館していますが、島津製作所では安心して見学できるよう開館に向けて準備を進めているそうです。
解説
島津製作所の創業者である島津源蔵は、1860年に木屋町二条に仏具製造の店を開いた。明治時代になると木屋町二条周辺は京都の近代工業・科学技術の中心となり、特に源蔵の店の近くに、科学技術の研究機関「舎密局」が開校した。舎密局に良く出入りしていた源蔵は、政治家が日本を科学立国にしようとしていることについて考えを深め、輸入されてくる理化学機器を自分たちでも生産できると確信した。そして1875年教育用理化学製造工場「島津製作所」を創業した。このような経緯でこの記念館がある場所が、島津製作所の創業の地となった。
資料館は、創業100周年を記念して開館され、2011年には島津製作所の歴史だけでなく明治以降の理化学教育,技術革新の歴史が見られるようにリニューアルを行った。資料館の建物は1888 年、1894 年から現存するものであり、国の登録有形文化財に指定されている。
特に注目される展示品としてX線、分光光度計、ガスクロの装置が挙げられる。X線は、1895 年 11 月 8 日,ドイツ・ヴュルツブルグ理科大学のレントゲン博士が発見され、翌年から日本でも応用の研究が始まった。実は電源設備のある島津製作所で研究が始まり、源蔵はX線の有用性を認識したことで開発が進み様々な製品が作られた。そのため教育目的の実験器具から、医療用に使われていた装置まで様々なX線に関する展示がある。分光光度計は戦後、いち早く復活した鉄鋼業において技術革新を支えるものとなり、国産化と高性能化が求められていた。島津製作所では、日本電池(現在,GS ユアサ)に光源の、浜松テレビ(現在,浜松ホトニクス)に検出器の開発を依頼し、1952年に世界で初めての光電子増倍管を搭載した高感度・高精度光電分光光度計を完成させた。この分光光度計QB-50が展示されている。1950年代に始まった石油化学工業では、分留よりも短時間の分析が可能で高精度なガスクロが必要だった。そこで島津製作所では、京都大学の指導を受けて研究を進め1957年に国産初の汎用ガスクロマトグラフを製品化した。このガスクロGC-1Aも展示されている。このほかにも化学に関する分析機器が数多く展示されている。また、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が開発したレーザーイオン化質量分析技術を紹介するパネルなども展示されている。
京都市内ということで、観光や学会ついでに訪れることができる。現代の分析機器は、パソコン上でクリックすることでほとんどの操作はできてしまうが、パソコンがない時代の装置は、多くの機器の調整が必要だった。過去の機器を眺めながら、分析技術の発展を感じてほしいと思う。コロナウィルスの影響で閉館されているが、開館が再開し京都にて学会が普通に開催される日常が早く戻ることを祈る。
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- 島津製作所 創業記念資料館: 公式サイト
- 日本の科学史,科学教育史を語る島津製作所 創業記念資料館と収蔵品:化学遺産認定時の化学と工業の記事