日本化学会化学遺産委員会がスロイス『舎密学』と『グリフィス『化学筆記』を化学遺産に認定したことを受けて、それぞれを所蔵する金沢市玉川図書館近世史料館と福井市立郷土歴史博物館では展示会を開催する。
幕末から明治初期にかけて近代化学の講義が行われていましたがアボガドロの分子説を採用していない1860年以前の内容でした。そこで、アメリカのW. E. グリフィスは、1871(明治4)年3月から翌年1月まで福井藩の藩校明新館で物理と化学を教えていたそうです。一方、オランダのP. J. E. スロイスは、1871年4月に金沢藩の金沢医学館(現在の金沢大学医学部)に着任し、医学やその基礎として化学などを講義していたそうです。グリフィスは1870年にアメリカで出版された教科書George F. Barker著 “A Text-book of Elementary Chemistry: Theoretical and Inorganic”を使い、スロイスは1867年にイギリスで出版された教科書 William A. Miller著 “Elements of Chemistry: Theoretical and Practical”を使い、アボガドロの分子説に基づいた当時最新の化学、例えば水素や酸素などが2原子分子であることや原子価、水の分子式はH2O、硫酸はH2SO4であること、現在の値に近い原子量をそれぞれの元素が持つことを教えたそうです。
その講義を受講した本多鼎介や門野隼雄、藤本純吉や藤井貞為の講義録が福井市立郷土歴史博物館と金沢市玉川図書館近世史料館にそれぞれ所蔵されていて、2018年3月8日に化学遺産44号に認定されました。福井郷土歴史博物館では3月24日~5月20日に特設コーナーを設け、化学筆記や同遺産の認定証を展示します。また、金沢市玉川図書館近世史料館では、春季展「化学遺産認定記念 藤本文庫展」として4月28日(土)~6月24日(日)まで展示公開されるようです。ちょうどゴールデンウイークの時期なので福井・金沢への観光を考えている方は、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
また、これに関連して化学史学会主催の化学遺産市民公開講座が3/21(水・祝)に日本大学理工学部船橋キャンパスで開催され、他の化学遺産とともに紹介されるようです。入場無料、事前申し込み不要なので年会ついでに訪れてみてはいかがでしょうか。
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