元素の特性に基づくキャラクターデザインとフィクションの要素を融合させ,物語にまで昇華させた,待望の元素擬人化ファンタジーが誕生しました.
錬金術の神秘から現代の科学までを織り交ぜながら,読者を魅惑的な元素楽章の世界に誘う.個性あふれる元素たちとともに,かれらの住むアスティオン大陸の魅力的な名所を観光雑誌風に紹介し,旅の魅力を鮮やかに描く.先人たちによる錬金術や賢者の石の探求にも触れ,一方で宇宙における元素誕生から寿命が尽きるまでを壮大につづる.周期表の果てに広がる超重元素への希望と感動は,きっと読者の心に響くはず―.
純粋な物質が生命を宿すとき,かれらの物語が美しく動きだします. 元素たちの冒険を,麗しいイラストとともに,どうぞご堪能ください.引用:化学同人
対象
中学生から大人まで、元素に興味のある人はもちろんのこと、科学に馴染みの薄い初学者、学びながら楽しみたい人など一般向けの読み物。
目次
序曲 ようこそ元素の世界へ
第1楽章 元素十八重奏
第2楽章 周期表の歩き方
第3楽章 魔術と科学の狭間
第4楽章 原初の者
第5楽章 脆い力
終楽章 離島の旅人
カーテンコール
各章の内容と特徴
第1楽章 元素十八重奏
この章では本書籍で登場する、炭素をはじめとした42の元素が擬人化されて紹介されています。各元素は、生命と機械の中心元素 (炭素とケイ素) 、大空を占める気体元素 (窒素と酸素) 、人体で働く元素 (リンとカルシウム) 、などと周期表の順番通りではなく、元素の特徴別に用途や色、物性などが説明されております。また、各元素を擬人化することで、視覚的にも特徴をつかみやすくなっております。例えばDNAに含まれるリンの場合、髪の毛の先が二重らせん構造のようになっております。
第2楽章 周期表の歩き方~終楽章 離島の旅人
第2楽章以降では、筆者の揚げ鶏々先生の作り上げた元素擬人化プロジェクト、元素楽章という物語の舞台”アスティオン大陸”を歩きながら元素を学んでいきます。このアスティオン大陸は典型元素の開かれた国家であるヘリオス王国や、遷移金属の軍事国家であるソンドル共和国などを巡りながら、各国に住まう元素たちを紹介していきます。元素の特徴と元素楽章の設定が非常にマッチしており、例えば写真フィルムの感光剤として用いられる臭素Brは”ぶろみん新聞社”の記者をしています。
また元素の説明だけではなく、バニリンやメントールをはじめとした化合物の紹介や原子力発電所の説明、専門的な内容として放射性崩壊とエネルギー、核融合やβ崩壊などによりどのように各元素 (原子) が生まれたのかまで説明されています。
終楽章では超重元素がどのようにして生まれるのかについて説明されています。また特集では、日本で合成、発見された元素であるニホニウムと、ロシアで合成、発見されたオガネソンについて取り上げられています。各元素の合成、発見者である森田浩介先生やユーリイ・オガネシアン先生のインタビューも記載されており、合成に関するエピソードなどを知ることができます。
感想
元素好きにはたまらない一冊と言っても過言ではないと思います。私自身様々な元素の本を読んできましたが、その中でも一番楽しく元素について学ぶことができました。その理由が、この書籍の一番の特徴でもある擬人化とファンタジーという部分だと思います。可愛らしいイラストや非常に凝った設定から元素を学びつつ、時には専門的な部分まで触れられていました。このことは中学生や高校生をはじめとした元素についてまだ知識の薄い初学者から、元素について勉強し直したいけれどもハードルが高いと感じてしまう人、久しぶりに元素について勉強し直したい人にも向いていると感じました。私のなかでは特に、専門的な元素 (原子) の生まれ方の部分について学び直すこともでき、鉄以上に重い元素 (原子) の出来る過程ではゆっくり (slow) と合成するsプロセスと、すばやく (rapid) 合成するrプロセスが存在するなど、新しく知ることのできた部分も多くありました。また、元素一つ一つについても学ぶことが出来ますが、元素の住まう各大陸ごとに説明されているため、元素を体系的に学ぶことができることもこの書籍の特徴の1つだと思いました。
普段専門書や論文を多く読んでいらっしゃるケムステ読者の皆様にも、このようなファンタジーを通して楽しく学ぶこちらの書籍は自信をもってオススメできます。
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関連サイト
https://agedoridori.jimdofree.com/gensogakusho/ : 元素楽章について
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b643655.html : 化学同人ウェブサイト
https://x.com/agedoridori : 著者 揚げ鶏々様のX (旧Twitter)