概要
親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.「有機化学を学びたい人」の立場に立って書かれた新タイプ.引用:東京化学同人
対象者
- 有機化学初心者
- 学部生
- 有名な教科書のハードルが高いと感じる人
目次
1. 有機化学への招待
2. 一般化学とのつながり:電子をみつけよう
3. アルカンとシクロアルカン:性質と立体配座解析
4. 酸と塩基/電子の流れ
5. 化学反応解析:熱力学と速度論
6. 立体異性:空間における原子の配置
7. 有機化学におけるグリーンケミストリーの基本
8. アルケンⅠ:性質と求電子付加反応
9. アルケンⅡ:酸化と還元
10. アルキン:求電子付加反応と酸化還元反応
11. ハロアルカン(ハロゲン化アルキル)の性質と合成:ラジカル反応
12. 置換反応と脱離反応:ハロゲン化アルキルの反応
13. アルコール,エーテルとその関連化合物:置換反応と脱離反応
14. 構造の同定Ⅰ:赤外分光法と質量分析法
15. 構造の同定Ⅱ:核磁気共鳴分光法
内容
有機化学のスタンダードな内容を取り扱っている本で,初めて有機化学を勉強する人や,もう一度有機化学を勉強してみたい人におすすめです.扱っているトピックとしてはマクマリー有機化学やボルハルトショアー有機化学といった有名な本と同じですが,本の副題にもあるように「学び手の視点」を意識して書かれています.
具体的には多くの初学者が困ってしまうポイントを重点的に説明してくれることや,覚えておいた方がよい値や事柄の強調がなされています.しかし,何といっても一番目を見張るのは先生が本の中で話しかけてくれることです.
有機化学の説明の中では,先生のコメントやつぶやきが [コメント] という形式で現れる他にも,本の色んな場所に友達や先輩のキャラクターが現れて勉強の手助けをしてくれます.有機化学に関するコメントだけでなく,勉強の仕方などについてもコメントしてくれています.
この本の1章では,著者の学生時代の話や有機化学の勉強方法,著者がこの本を書こうと思った理由,この本の構成について詳しく説明しており,他の本では全く見ない章になっています.どの章の内容も興味深く,面白いことはもちろんですが,特に1章に著者の教育に対する愛が感じられました.
いくらかの大学生にとって有機化学は試験で点数をとるためであったり,大学の単位をとるためであったりするもので,その勉強は楽しいとは言えないと思います.
もし読んでいる教科書が味気なく,勉強がなかなか進まない人は是非この本を手に取ってみてはいかがでしょうか.
実はこの本の著者も学生時代は有機化学が特別得意ではなかったのですが,その時の先生が親身になって(学び手の視点に立って),教えてくれたことが人生に大きな影響を与えてくれたそうです.
私はこの本を読んでいく中で,まるでオフィスアワーや大学のカフェテリアで先生と雑談を交えながら勉強をしているように感じました.
私が有機化学を初めて勉強したときに,もしこの本があったらより楽しく勉強できたのかもしれない…と少しばかり若い方々がうらやましくなりました.