概要
日本人が苦手な「打ち解ける」「間を埋める」「盛り上げる」を 世界の一流ビジネスマンはどうやっているのか?
日本では、取引先との商談などを始める際に、
本題に入る前のイントロダクションとして雑談を交わすのが一般的です。
天気の話に始まり、SNSで話題になっていることや、
お互いの業界のウワサ話など、
そのほとんどが「とりとめのない会話」です。
ビジネスマンは雑談を本題に入る前の「潤滑油」と考え、
その場を和ませたり、無駄な緊張感を取り除いて、
相手との距離感を縮めることを期待しています。
お互いの関係性を深めるのは大事なことですが、
筆者は「それだけでは、あまりにももったいない」と考えています。
なぜならば、そこが「ビジネスの場」であるからです。世界のビジネスシーンで、一流のビジネスマンが交わしているのは、
日本的な雑談ではなく、「dialogue」に近いものです。
ダイアログとは、「対話」という意味ですが、
単なる情報のやりとりだけでなく、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、
行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーションを目指した会話です。
彼らは明確な意図を持って目の前の相手と向き合い、
「雑談」を武器としてフル活用することで、仕事のパフォーマンスを上げ、
成果を出すことを強く意識しています。
日本のビジネスマンの雑談には、
こうした戦略的な視点がスッポリと抜け落ちているのです。本書では、雑談を社内や社外の人間関係の構築に活かし、
仕事で成果を出すための考え方や実践法を徹底的に掘り下げて詳しくお伝えします。
世界のビジネスマンの雑談との向き合い方や、日本との考え方の違いを知ることは、
雑談のスキル向上だけでなく、仕事のクオリティーを高めることに結びつきます。(引用:クロスメディア・パブリッシング)
対象者
本書はビジネス書なので誰でも。若手社会人や学会参加の機会が多い若手研究者にお勧めの書籍です。
目次
第1章 ここが違う! 「世界」の雑談と「日本」の雑談
第2章 グーグルの強さの秘密を知る! 強いチームをつくる「社内雑談力」の極意
Part1 グーグルは雑談とどう向き合っているのか?
Part2 なぜ「社内の雑談」が重要なのか?
Part3 マネジャー(上司)に求められる雑談とは?
Part4 メンバー(部下)に必要な雑談とは?
第3章 どうすれば結果が出せるのか? 武器としてのビジネスの雑談
第4章 何を話すべきではないのか? こんな雑談は危ない! 6つのNGポイント
「何を聞かない方がいいか?」を合理的に判断する
「こんな雑談は危ない!」という視点を持つ
雑談のNG 01 相手のプライベートに、いきなり踏み込まない
雑談のNG 02「ファクト」ベースの質問は意外に危険
雑談のNG 03 ビジネスの場で「収入」の話はしない
雑談のNG 04「シチュエーション」を考えた雑談を心がける
雑談のNG 05「宗教」の話は無理に避ける必要はない
雑談のNG 06「下ネタ」で距離感が縮まることはない
あえて「雑談をしない」という選択肢もある
解説
自分は社会人になってだいぶ経ちますが、まだまだ社外の人と話すのはなかなか苦手であり、打ち合わせや会食の予定があると自分がうまく振る舞えるか不安になってしまいます。そんな中、Amazonにて売れ筋ランキングで上位にあるこの書籍に興味を持ち、ビジネス上での他者とのコミュニケーションをどう進めればよいのか勉強するため購入し読んでみました。著者は起業家のピョートル・フェリクス・グジバチです。ピョートルさんはポーランド出身で、2000年に来日して以来ベルリッツ、モルガンスタンレー、Googleにて人材開発に携わってきました。2015年からは独立し、起業家として数々の企業の創立に関わっているようです。
では内容を見ていきます。第1章では日本と海外における雑談の違いについて論じており、日本のビジネスマンの雑談は、天気やテレビの話など意図のない話で場を和ますのに注力しているのに対して、海外のビジネスマンは、雑談ですら意図を持って雑談を行い、ビジネスに有益な情報を得ようとしているといった内容となっています。特に参考になったのはどんな姿勢で雑談に臨めばよいかや、どう自己認識・自己開示を行えばよいかについてで、意図を持った会話を行うために必要な頭の整理を行う必要があることを認識させられました。第2章は、社内コミュニケーションについてGoogleでの事例を踏まえてどのようにすればよいのか解説しています。人によっては、オフィスでの雑談は気が散るので好きではないこともありますが、仕事を行う上で様々なメリットがあるため必要であることが解説されています。その上で上司の立場でどんな話を部下にすればよいのか、部下はどんなことに気を付けて上司に話せばよいのかについてアドバイスがなされています。興味深いと思った内容は飲み会の話題についてで、日本の場合、仕事の愚痴でストレスを発散させているだけなのに対して、海外のビジネスマンは愚痴をこぼすことは同じでも、他者にアドバイスを求め解決策を探すことを行っていると主張しています。お酒が入っているので、どこまで覚えていられるかは分かりませんが、愚痴の言い合いを建設的にできるため有用な内容だと思いました。
第3章では社外の人との会話・会議についてが主題であり、第1章の内容で触れたとおりビジネス上有益な情報を得るためには、どんなことを相手に聞けばよいのかアドバイスがなされています。話す内容はもちろんのこと、複数人での会議の時に誰に聞くかや本音を引き出したいときに有効な場所など、様々なテクニックが解説されています。実践で使える”一言”も多数紹介されており、今までのやり方を変える場合でも言葉遣いについて悩むことなくフレーズをそのまま用いて新たな展開にすることができます。第4章では、雑談のNGということで、避けた方が良い話題や会話の方向について解説しています。雑談のNG 01に関して雑談の中で相手のプライベートにいきなり踏み込まないということは当然である一方、3章まででは家族に関することなどから共通点を探し相手との距離を近づけることが大事だとしています。そこでどのようなアプローチをとってこの矛盾を乗り越えることができるかなどが説明されており、参考になるかと思います。
本書では一貫して日本のビジネスマンが行うコミュニケーションのスタイルを改善するため、Googleや欧米の手法を解説しています。第2章の自分の組織内に関する内容は、会社だけでなく研究室でも役に立ち、すぐに実践すべき内容も多く紹介されていると思いました。一方第3章の内容については、これまでの関係ややり取りもあるため、いきなり本書に書かれたことを直ちにすべて実施するのは難しいかもしれませんが、やり取りに行き詰っていてより多く相手のことを知りたい場合には、少しづつ実践してみるのも良いかと思います。会議や学会といった対面でのやり取りが急速に戻りつつある中、本書を読むことで雑談だけでなく相手とのコミュニケーションの方法全体について考える、再考するきっかけになると思います。