概要
575(ご・しち・ご)化学実験とは、「準備5分、実験7分、片付け5分で実施できるほど簡単で、かつ、教育効果のある実験」で、平成30・31年度 東京都理化教育研究会 化学専門委員会により提案された。本書はその成果をさらに発展させ、より使いやすい内容として整理。書籍購入者は、収載している実験の動画や、授業で使える実験プリントのデータなどが利用能。
手軽で安全な実験が多いので、高校化学の授業だけでなく、自由研究や実験教室のネタとしても最適です。
(引用:丸善出版)
対象者
学校の教員。概要の通り、化学の自由研究に興味のある親御さんや実験教室を開催している方にも参考になる書籍です。
目次
第1章 物質の構成
1 30秒でワインを蒸留
2 ウォッカで色素を抽出
3 30秒で色素の分離
4 10秒で炭素の検出
5 かんぴょうで炎色反応
第2章 物質の変化
6 銅はくで定比例の法則を確認
7 シュウ酸で量的関係を確認
8 クエン酸でアレニウスの定義を確認
9 酢酸とアンモニアを混ぜて消臭
第3章 物質の状態と平衡
10 水蒸気でマッチを燃やす
11 手のひらで反応熱を確認
12 数滴でダニエル電池
13 導線不要の鉛蓄電池
14 銅はくで電気分解
15 シリンジで状態方程式を確認
16 湿度から気体定数を計算
17 試験管でチンダル現象
第4章 物質の変化と平衡
18 シリンジで反応速度を測る
19 色の変化で反応速度を確認
20 試験管で平衡移動を確認
21 臭いと沈殿で平衡移動を実感
第5章 無機物質
22 二酸化炭素の反応を音で確認
23 ヨウ素で色がついたり移ったり
24 試験管でいぶし銀づくり
25 日光写真の仕組みを考える
第6章 有機・高分子化合物
26 使い捨てカイロでエステル合成
27 グルコースで藍染め
28 ヨーグルトでタンパク質の確認
29 銅はくでレーヨンづくり
30 ボンドとペットボトルで合成樹脂の実験
解説
こちらの書籍を一言で表すと、高校化学の実験指南書です。ただ、教科書に掲載されているような典型的な実験ではなく、準備5分、実験7分、片付け5分で完結するようにデザインされた実験が紹介されています。本書を読む前は、一つくらいは体験した実験が載っているかと思いましたが、全て未体験の実験でした。
ページ構成として、最初の概要で実験で取り上げる事象や典型的な実験との違いに触れています。次に実験プリント例で、実験手順や結果・考察を例示しており、そのまま教員がこのページを使って実験を行えるようになっています。解説では、実験の原理から操作上のポイント、使用している試薬や素材の説明、追加の発展実験例まで解説されています。生徒が参加して行う実験の授業では、予備実験を行いますが、本書には実験の様子を撮影した動画のリンクが貼りつけられており、操作のタイミングを動画で確認しながら準備を進めることができます。基本的には学校の器具や試薬を使った実験が紹介されていますが、一部は家庭にあるものでも実施可能な実験も含まれており、家庭での自主学習も可能です。
中学や高校にはNMRなどの分析機器はもちろんないので、化学反応後の生成物を確認する手段は限られています。そんな中、本書では色や匂いの変化をうまく駆使して、生徒に化学反応が起きて異なる分子が合成されたことを感じられるように原料がうまく選ばれています。また、シリンジを使って発生したガスを定量している実験がいくつか紹介されていますが、これも通常は発生した気体をハンドリングするのは難しく、使い捨てのシリンジをうまく使って実験を完結させているのは先生方のアイディアが詰まっていると感じました。
自分は、中高で実験の楽しさに魅力を感じて化学科に入学したわけですが、先生方が本書を活用し、化学実験の楽しさや化学を学ぶ意義を授業の中で多くの生徒に示してほしいと思います。