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化学書籍レビュー

次世代医薬とバイオ医療

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次世代医薬とバイオ医療

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概要

医薬と医療を照らす近未来創薬研究、多様化するモダリティをまとめて解説。中分子医薬(ペプチド医薬、核酸医薬)、CAR-T細胞療法を始めとする細胞治療、MSCやiPS細胞を用いた再生医療、ゲノム編集などを応用した遺伝子治療、mRNAワクチン、エクソソーム創薬、コンパニオン診断薬、PROTAC、DEL、iChip、AI創薬など、話題の創薬研究・手法をわかりやすく紹介。(内容説明 より)

対象

  • 次世代型医薬モダリティについて網羅的に学びたい人
  • 創薬研究を志す大学院生と研究者
  • 最先端創薬事情や規制についてのとっかかりを知りたい人

内容

本書は、「創薬化学―メディシナルケミストへの道」「バイオ医薬―基礎から開発まで」に続く、創薬科学シリーズ教科書三部作の第3巻です。

現代はモダリティの多様化時代。この2巻だけでは到底記述しつくせる様子がありません。昨今の革命的成果であるmRNAワクチンも、従来の創薬概念に乗らないものであり、モダリティ多様化がもたらした一つの到達点です。このような潮流は医薬の幅を広げ、私たちの生命の安心・健康に日々貢献し続けているわけです。

第1巻の「創薬化学」は古典的王道の低分子創薬、第2巻の「バイオ医薬」はこの20年の製薬業界を牽引してきた抗体をメインとする高分子創薬を主として取り上げてきています。第3巻はそれを補完する位置づけをとりつつ、従来の枠を飛び出した「他のあらゆる創薬モダリティ」と、事例としてのマイルストーン上市薬を網羅的に取り上げています。

章立てを見ても分かるとおり、いわば「モダリティカタログ」として活用するのがよい書物だと思われます。特に抗体医薬の次世代を担うとして最近注目されている中分子医薬品を包括的に取り上げている教科書は大変希少です。また再生医療・細胞治療については、我が国の規制(法令・品質管理など)についても丁寧に触れられています。さらにはCOVID-19の対応に尽くしたmRNAワクチンの最新事情も1章を割いて記されています。第III部以降は記述の少ないところもありますが、これはまだまだ発展途上のものが多い実情を反映してもいます。

核酸医薬の章における1ページ(化学同人の立ち読みサイトより引用)

 

【章立て】
第Ⅰ部 中分子医薬および関連医薬
第1章 次世代医薬としての中分子医薬
第2章 ペプチド医薬およびペプチド様医薬
第3章 核酸医薬
第4章 mRNAワクチン

第Ⅱ部 遺伝子治療,再生医療・細胞治療および関連医薬
第5章 遺伝子治療
第6章 再生医療・細胞治療
第7章 エクソソーム創薬
第8章 個別化医療に向けた診断用医薬品-コンパニオン診断薬

第Ⅲ部 次世代医薬開発において注目すべき創薬手法・技術
第9章 新しい創薬手法-標的タンパク質を分解するPROTAC
第10章 創薬のための新スクリーニング手法-DEL(DNAコード化化合物ライブラリー)
第11章 創薬のための新たなデバイス-iChip未培養微生物
第12章 AI創薬

コラム

筆者が学生のころは、国内でも低分子創薬の勢いが強く、猫も杓子もそればかりだった記憶があるのですが、20年ほど経った今、現代創薬がこれほどまでに多様な広がりを見せていることに、隔世の感を隠しきれません。このような群雄割拠では何が今後台頭するのかさっぱり分からないと一見して思われるのですが、一個人のリソースは有限である以上、どのような技術が求められてくるはずなのかを大きな流れに沿って先読みし、一歩先んじるやり方を選びってべきであろうと常々痛感しています。

本書で記述されるモダリティは個性の強いものばかりです。これらモダリティの勃興・発展史を学び、どのような構想がその裏に流れているのかを学ぶことは、そのような力を育む大きな助けになるでしょう。

次世代医薬とバイオ医療

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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