ドラえもん探究ワールド 身近にいっぱい!おどろきの化学 (ビッグ・コロタン 202)
概要
「化学」への興味の芽を育むマンガ+解説書 子ども(大人も)の毎日は、「化学」とのお付き合いから始まります。
<たとえば>
*寝グセ・・・髪の毛の水分とアミノ酸の結合の問題
*歯みがき・・・口内環境が酸性化しないための習慣
*朝ご飯の卵焼きやヨーグルト・・・タンパク質の変性でできあがる
*不織布のマスク・・・繊維を熱で固めているこれはほんの一部ですが、くらしの中の身近なモノ・コトと、「化学」のつながりを、本書は平易に解説しています。
しかもドラえもんのマンガが導入だから楽しい!化学の面白さに気づく!興味がぐんぐん育つ!.(引用:小学館より)
対象者
ホントに誰でも。ふりがなも振ってあるので小学生でも読めます。
目次
【第1章 ものの成り立ち】
◎まんが/半分の半分のまた半分…
・ものをどんどん切っていくと…?
◎まんが/サンタイン
・どんな変身も自由自在! 物質の変化の秘密
【第2章 家の中で見つける化学】
◎まんが/クモノイトン
・どこまでも続くミクロな世界
・選択で衣類をピカピカに!
◎まんが/おかし牧場
・おかしに欠かせない甘さ
・はじけるうまさ、ふくらむ笑顔
・化学反応で料理を知ろう!
◎まんが/メロディーガス
・からだから出るガスとエネルギー
・からだの中は化学物質の宝庫
◎まんが/歯みがきで強くなろう
・歯みがきでむし歯を防ぐ!
・中和でピカピカに! 家の大掃除
【第3章 まちにあふれる化学】
◎まんが/おおかみ男クリーム
・変身できなくても、おしゃれしたい
・髪の毛も化学の力で思い通り
◎まんが/エスキモー・エキス
・熱エネルギーは引越しがお好き?
・熱のパワーを利用しよう
◎まんが/宇宙戦艦 のび太を襲う
・ウイルスが攻めてきた!!
・地球を侵略しているのは、私たち人間?!
・地球を守るための工夫
【第4章 行事の中の化学】
◎まんが/力をためる力電池
・電気をためて持ち運ぶ
・化学の力でエネルギーをつくり出す
◎まんが/花火のたね
◎まんが/はるかぜうちわ
・季節や行事の中にも化学がいっぱい
・新学期とお道具箱~何が入っているかな?
・夏だ! 祭りだ! 花火だ!
・食欲の秋と紅葉狩り
・新年のごちそうと雪合戦
【あとがき】・・・中 寛史
化学で私たちの未来はどう変わる?
解説
ドラえもんの本なんて、せいぜい教科書レベルの内容だろう。そう思っていましたが、読んでみると知らない化学の内容が満載の興味深い本でした。
本書は、ドラえもん探究ワールドシリーズの中の一巻で、今年の3月に出版されたばかりの新書です。各トピックでは、近い内容のドラえもんのマンガが前座として掲載されており、それに続いて化学の内容が解説されています。マンガは単行本の引用で、いくつかは読んだことがある内容でしたが、関連度が極めて高く、文字が多い解説パートに躊躇なくページを進めることができます。
各章ごとに内容を見ていきます。第1章では化学の基礎として高校化学レベルの内容がまとめられております。しかし、細部の記述は詳しく、例えば周期表では118番の元素に対して金属/非金属と遷移金属か否かまでまとめられています。第2章は、家の中の化学品として繊維や洗剤、化粧品などを解説しています。一般向けの解説では、洗濯洗剤には界面活性剤が入っていて、汚れに対してミセルを形成して剥がすまでを説明していることが多いですが、本書では、漂白剤と洗剤の違い、還元型と酸化型の漂白剤の違い、洗剤と柔軟剤の吸着の違いなど、かなり踏み込んだ内容までも構造式を交えて取り扱っています。特に洗剤と柔軟剤の違いについて自分は知らなかったので、化学を勉強した方でもこの本を読むと新たな発見があると思います。
第3章は街の中の化学として、化学におけるエネルギーの原理や環境問題、電池、光触媒といったトピックが取り扱われています。第2章と比べると典型的な内容が多いですが、化合物の名前や用語(p型n型半導体など)がぼやかすことなく使われており、詳細をインターネットで調べることができるような構成となっています。第4章では、色に関する化学現象を中心に解説しています。具体的には、消せるボールペンの仕組みや、炎色反応、日焼け止めの違いなどが紹介されており、詳しい文章に対して程よいレベルの図が添えられており、正しくかつ楽しく理解できる内容になっていると思います。
タイトルは覚えていませんが、自分が小学生の頃に宇宙に関する似たような本を図書館で読みました。その本は、本書のように自分の親が知らない内容が満載で面白かったことを記憶しており、ドラえもんの解説本は、科学について知るには最適な書籍だと思います。本書は、京都大学大学院薬学研究科の薬品分子化学分野研究室に所属されている中寛史准教授が監修をされており、最前線で活躍する専門家が出版に関わられたことでこのような質の高い解説本が完成したと想像できます。ドラえもんのマンガを読むついでに身の回りの化学について少し勉強してみませんか。