[スポンサーリンク]

化学教育

化学知識の源、化学同人と東京化学同人

[スポンサーリンク]

化学の専門家なら化学同人と東京化学同人の教科書や参考書を必ず一冊は購入したことがあると思います。この記事では、そんな化学知識の源である2社について紹介していきます。

会社概要

まず化学同人についてですが、株式会社化学同人は京都市下京区に本社を構える出版社です。1954年9月に大阪大学の小竹無二雄教授が、他の先生方と月刊誌「化学」を刊行するために集まったのが始まりで、小竹教授が「化学同人」という社名を名付けられたそうです。一方、株式会社東京化学同人は、社名の通り東京都の文京区に本社を構える出版社です。創業は1961年で、月刊誌である現代化学は、1971年に創刊されました。両社の名前が似ている理由は分かりませんでしたが、両社はそれぞれ長きにわたって化学の教育と研究を支えてこられたことがわかります。

出版書籍の傾向

次に出版されている本を分野別にまとめてみました。両社のホームページに掲載から書籍の数をカウントしましたが、複数のジャンルがタグ付けされた書籍もあり、割合でグラフを作成しました。

発行されている本の傾向

両社の特徴を挙げると、化学同人からは専門書だけでなく一般科学に関する書籍が高い割合で出版されているのが分かります。実際、一般科学に関する質の高い読み物がDOJIN選書やDOJIN文庫というシリーズで出版されており、一般教養の広い分野に対して出版活動を行われています。一方の東京化学同人では、物理学や数学の教科書も出版されており自然科学を手広くカバーしているようです。

DOJIN文庫の一例

東京化学同人から出版されている単位に関する書籍

化学の各分野に関して、両社同じような割合で書籍を出版されていることが統計から示されますが、東京化学同人では、有機化学の書籍がやや高い割合で出版されていることが分かります。

化学から少し離れた分野を見ると、東京化学同人では薬学・医療に関する書籍も多く取り扱われていることが分かります。例えばスタンダード薬学シリーズを出版されており、免疫に関する教科書・書籍も充実しています。化学同人は食品学・栄養学の書籍を多く取り扱われています。自分が中学生の頃、母親が所有する栄養学の書籍には化学同人と書かれており、どんな出版社なのか不思議に思っていました。そして月日が経ち、自分もその化学同人から出版された書籍で勉強することになったわけです。

[amazonjs asin=”4807917277″ locale=”JP” title=”薬学総論 II 第2版(スタンダード薬学シリーズII-1): 薬学と社会 (11) (スタンダード薬学シリーズ 2-1)”] [amazonjs asin=”4759821643″ locale=”JP” title=”公衆栄養学実習 第4版 (エキスパート管理栄養士養成シリーズ)”]

月刊誌

化学同人からは月刊「化学」、東京化学同人からは「現代化学」が月刊誌として発行されています。どちらも手ごろな価格にもかからず最新の化学研究や時事ネタの解説、化学研究に役立つ豆知識などの情報が掲載されており、個人で購読しても損はないと思います。またどちらも電子版を発行しており、移動中でもスマホなどで読むことができます。バックナンバーの特集や連載記事を見ると、月刊「化学」は化学をコアにした記事が多く、「現代化学」では様々な視点で化学を解説しているようです。

[amazonjs asin=”B09X2B5XXD” locale=”JP” title=”化学 2022年 05月号 雑誌”] [amazonjs asin=”B09RKFYMVG” locale=”JP” title=”現代化学 2022年5月号 雑誌”]

代表的な書籍

まず、各分野の教科書から見ていきます。有名な翻訳版の教科書をまとめましたが、東京化学同人から多くの教科書が出版されているようです。

各分野で有名な教科書

一方、化学同人からも大学生以上を対象にした学習本は多く出版されており、1000本ノックシリーズは有機化学の項目別学習に最適の書籍です。

有機化学1000本ノック

次に専門書に移りますが、化学同人からはCSJカレントレビューを代表的な専門書として挙げられます。2010年の第1版から始まり、第44版まで出版されています。それぞれのテーマについて基礎的な内容から最新の研究トピックまでまとめられており、入門者が研究の最前線に追いつくのに最適な書籍だと思います。

モビリティ用電池の化学: リチウムイオン二次電池から燃料電池まで(CSJ:44)

東京化学同人からは有機合成反応をまとめた良質な書籍がいくつか出版されています。天然物、有機合成、有機金属、触媒、高分子、有機分子物性とどの分野を専攻しても、いろいろな反応を知ることは重要であり反応をまとめた書籍は反応理解に役立つと考えられます。

有機合成のための新触媒反応101

いくつかの視点で2社を見てきましたが、改めて化学の学習と研究において大変お世話になっていると感じました。自然科学の1分野であるにもかからず、化学の書籍を主に取り扱う出版社が2社あることは、学生や専門家にとっては恵まれた環境だと思います。化学同人と東京化学同人だけでなく多くの出版社より、化学の専門家を育てる教科書や専門書が今後もたくさん出版されることを期待します。

化学同人と東京化学同人のケムステ書籍レビュー

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. フロー法で医薬品を精密合成
  2. とある農薬のはなし「クロロタロニル」について 
  3. SciFinder Future Leaders in Chem…
  4. ケムステV年末ライブ2022を開催します!
  5. Reaction Plus:生成物と反応物から反応経路がわかる
  6. 有機合成化学協会誌2020年4月号:神経活性化合物・高次構造天然…
  7. 【ケムステSlackに訊いて見た④】化学系学生の意外な就職先?
  8. 海洋エアロゾル成分の真の光吸収効率の決定

注目情報

ピックアップ記事

  1. オキサリプラチン /oxaliplatin
  2. エポキシ樹脂の硬化特性と硬化剤の使い方【終了】
  3. カルボン酸の保護 Protection of Carboxylic Acid
  4. XPhos
  5. 面接官の心に刺さる志望動機、刺さらない志望動機
  6. 相次ぐ化学品・廃液の漏洩・流出事故
  7. 2012年ノーベル化学賞は誰の手に?
  8. sp3炭素のクロスカップリング反応の機構解明研究
  9. 有機合成化学協会誌2021年2月号:デオキシプロピオナート構造・遠隔不斉誘導反応・還元的化学変換・海洋シアノバクテリア・光学活性キニーネ
  10. 第25回ケムステVシンポ「データサイエンスが導く化学の最先端」を開催します!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP