概要
今や暮らしに欠かせないスマホの液晶や、有機EL材料、高血圧の治療薬。 これらは「有機化学」の技術、とくに近年ノーベル賞の受賞対象となった「クロスカップリング反応」の成果によって生み出されている。しかし、その実現には120年にもおよぶ研究者たちの挑戦があった――。 本書は、偉大な研究者たちが120年間何を考え、どう挑んだのかを、対話形式&ストーリー仕立てでエンタメ要素たっぷりに紐解いていく。“この1冊を読む3時間で有機化学が楽しめる”をコンセプトに、教育系YouTuberとしても活躍の場を広げる著者が、創意工夫を凝らし、文系・理系を問わず読みやすい入門書として執筆。多くの方に、実現までのスト―リーをお楽しみいただけるだろう。 【おすすめポイント】 ◎ フルカラーで見やすく、わかりやすい! ◎ 化学が苦手な文系高校生を主人公にしているので、初学者にも読みやすい! ◎ ノーベル賞研究を題材に、「研究」という営みがどのようなものか学べる! ◎ 難解なイメージを持ちやすい反応機構は、オリジナルのイラストでわかりやすく解説!(引用:裳華房)
対象
化学が好きな人、中学生〜大学生、どんな人でも
目次
第1週 有機化学はつまらない?
第2週 六角形をつなぐ旅のはじまり
第3週 未来へ紡ぐ山本明夫 -働くニッケル-
第4週 革命の時 -熊田・玉尾・コリュ-カップリング-
第5週 周期表の旅人
第6週 人類の到達点
第7週 研究はどのように評価される?
第8週 究極の反応を目指して
第9週 火星には旗が立っていた -ヴァンヘルデン・バ-バ-グカップリング-
第10週 夢の反応 -村井反応-
第11週 輝く星 キ-ス・ファニュ-
第12週 定跡を外す ArPTZ+
第13週 旅は終わらない
解説&感想
化学系Youtuber兼大学教員として大活躍中の、もろぴー(諸藤達也・学習院大学助教)が描き下ろした処女作!
ということで、話題になっていた、「文系でも3時間でわかる 超有機化学入門」を読了。表紙のインパクトがありすぎて、「一体何を読んでいるのですか?」と学生にからかわれましたが、れっきとした有機化学の書籍です。
タイトルから想像できるように、めちゃくちゃ基礎から有機化学を説明しようとしています。
そう思ったら必要最低限のものだけ教えて、開発物語が面白く、みなしっていてほしい日本のお家芸、クロスカップリング反応の話になります。
最終的にそれからはじまる次世代のクロスカップリング反応のお話で終わります。
いやいや、正直有機化学者にとっては有名な話ですが、一般的にはかなりマニアックな話です(個人的には全員知ってほしいですが)。
そんな化学を学んでいくのは今回の主役である女子高生「勇樹」。
女子高生がどれだけ活躍しているかはわからないですが、設定はわかりやすく、読みやすいです。なによりちゃんと構造式がたっぷりと出てきます!
化学構造式を書くと本が売れないとか、科学者、いや化学者でも嫌がる人が多いと言われる、我らの言語である構造式。最近、ある審査でも構造式を入れないほうがよいといわれて、非常に萎えました。
それを惜しみなくつかっているのはさすがだと思います。
クロスカップリング反応の開発の歴史に関しては、ケムステでもたくさん記事があり、かつ私も講義で日本で一番丁寧にクロスカップリング反応を教えています。
それでもわからないよーという化学科大学生、そんなの知らないよーという大学生、もしくは将来いろいろ分子をつくってみたい中学生・高校生にぜひ読んでほしいですね。
最後の、次世代型クロスカップリング反応の章は、村井反応、キース・ファニューのお話に加えて、自身のカップリング関係の研究についても解説しています。このへんは全く化学がわからない方にはどのように見えるのかわからないですが、有機化学者ならば書いておいて欲しい内容をぶっこんでしまうのもさすがです。
有機化学を専攻しているひとならば、1時間で、たしかに文系でも3時間でサラッと読めてしまうかもしれません。
有機化学者が伝えたいことを本書、幅広い読者に強くおすすめしたいと思います!
余談
実はもろぴーさん、現在は休眠状態ですが、ケムステスタッフでもあります。
もろぴーの記事
最近は多方面に忙しすぎて書けないかもしれないですが、ぜひまた記事を書いてください。
関連書籍
マンガでわかる有機化学 結合と反応のふしぎから環境にやさしい化合物まで (サイエンス・アイ新書)