[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

化学のためのPythonによるデータ解析・機械学習入門

[スポンサーリンク]

hodaです。今回は筆者の勉強用に読んだ機械学習関連の書籍を紹介します。

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

弘昌, 金子
¥4,688(as of 12/30 14:40)
Amazon product information

概要

本書は、化学・化学工学分野でPythonを使って機械学習を行うための入門書です。
これまでに蓄積してきた実験/製造データをデータ解析・機械学習を用いて分析することで、いままでとはまったく別のアプローチで材料開発を加速させたり、プロセス管理を効率化・安定化させたりすることができます。なぜなら、実験や製造データは、目に見えない、研究者・技術者の知識・知見・経験・勘の宝庫だからです。そして、データ解析・機械学習を用いることで、これらを目に見える形にすることができるからです。
読者が一から実践できるよう、Pythonのインストール方法、データ解析・機械学習の基本理論から、材料設計、分子設計、プロセス管理について実際にサンプルプログラムとサンプルデータセットを使った実践までを丁寧に解説しています。
(引用:オーム社HP)

対象者

・化学系、化学工学系でデータ解析や機械学習に挑戦したい人。

・ケモインフォマティクスやマテリアルズインフォマティクスの経験が多少ある中級者も。

・線形代数を少しでも学んだ大学生以上。

内容

本書は3部構成になっており、第1部で「Pythonと統計の基礎知識」、第2部で「データ解析・機械学習の基礎」、第3部で「化学・化学工学データでの実践のしかた」を学びます。

第1部では機械学習でよく用いられるプログラミング言語のPythonの基礎(第1章)と、ヒストグラムや散布図などデータの図示についての説明があります(第2章)。

第2部では、多変量データ、データの前処理、主成分分析、階層的クラスタリング、非線形の可視化手法といった多変量データとデータの可視化の説明があります(第3章)。さらに回帰分析、クラス分類といった化学データを用いたモデリングに必要な知識を学ぶことができます(第4章)。モデルの適用範囲、データ密度、アンサンブル学習法といった回帰モデル・クラス分類モデルの適用範囲についても述べられています(第5章)。

第3部では、材料設計、分子設計・医薬品設計、化学構造の表現方法、化合物群の扱い、化学構造の数値化・生成の他、化合物のデータセットを扱うときの注意点、具体的なデータセットを用いた解析を学びます(第6章)。また化学工学データを用いる機械学習として化学プラントにおける推定制御・ソフトセンサー、時系列データ解析の特徴、モデルの劣化と適応型ソフトセンサー、データ解析・機械学習による化学プラントのプロセス管理(異常検出・異常診断)といった時系列データの解析についても述べられています(第7章)。

サンプルコード、サンプルデータもダウンロード可能です。

感想

本書の構成は大きく分けると第1部、第2部がデータ解析・機械学習の基礎、第3部が化学や化学工学における機械学習の実践になっています。全体的に各コードに対しての説明が詳しいため、数値やパラメーターの変更がしやすく実践に非常に役立つと思いました。

第1部では、データの図示の章が筆者のお気に入りです。データの図示は視覚情報として重要であり、本書はデータの図示方法について簡潔にまとまっているので非常にわかりやすいです。

第2部では教師なし学習であるPCA、断層的クラスタリングなどや教師あり学習であるサポートベクターマシン、ランダムフォレストなどが具体的にどのようなデータ処理がなされていくのか説明されています(教師なし学習、教師あり学習については過去記事をご参照ください)。本書の対象者に「線形代数を少しでも学んだ大学生以上」と記載したのはこの部分で一部行列が出てくるからです。数式を避けることなくしっかりと説明されているという印象を受けたので、タイトルに「機械学習入門」と書かれてはいますが、初心者だけでなくデータ解析・機械学習の経験が多少ある中級者であっても勉強になる書籍であると思います。数式も少なくないということで、数学が得意でない人たちが心配するかもしれませんが、図も多く挿入されているので理解を助けてくれると思います。他にも回帰モデル・クラス分類モデルの適用範囲について1章分説明されており、さらに発展的な内容も含まれていて、推定モデルの適応範囲についても詳しく学ぶことができます。

第3部の「化学・化学工学データの実践のしかた」は特に実践を意識した構成になっていると感じました。材料設計における機械学習の例として樹脂材料などのデータを用いながら第2部までに学習したデータの図示、教師なし学習、教師あり学習、そしてモデルの適応範囲と実践でも行うであろう順番に沿って説明されており、初心者でも内容を追って行きやすいと思います。分子設計では特に必要な化学構造をPythonで扱うための説明も簡潔でわかりやすいです。また、薬理活性に関する機械学習の一例も紹介されています。化学工学系の機械学習としては時系列データ解析に焦点を当てており、化学プラントにおける適切な機械学習のモデル構築方法の一例が示されていると思います。

筆者はすべてのサンプルコードを動かしてみたわけではありませんが、サンプルコード、サンプルデータも充実しており、基礎から実践の具体例までが詰まっていると思いました。

関連書籍

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門

弘昌, 金子
¥4,688(as of 12/30 14:40)
Amazon product information

正誤表

明治大学理工学部応用化学科・金子研のホームページに本書の正誤表が掲載されていました。

関連リンク

金子研(明治大学理工学部応用化学科)による本書の紹介

Pythonで気軽に化学・化学工学(書籍レビュー)

ゼロから学ぶ機械学習【化学徒の機械学習】

表紙の画像はオーム社HPから引用しました。

hoda

投稿者の記事一覧

大学院生です。ケモインフォマティクス→触媒

関連記事

  1. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー4
  2. Essential Reagents for Organic S…
  3. Practical Functional Group Synth…
  4. 【書籍】ゼロからの最速理解 プラスチック材料化学
  5. なぜあなたは論文が書けないのか
  6. Greene’s Protective Groups…
  7. まんがサイエンス
  8. 【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の…

注目情報

ピックアップ記事

  1. アルキンメタセシス Alkyne Metathesis
  2. ブレデレック試薬 Bredereck’s Reagent
  3. “CN7-“アニオン
  4. 第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!
  5. γ-チューブリン特異的阻害剤の創製
  6. 非天然アミノ酸触媒による立体選択的環形成反応
  7. アスパルテーム /aspartame
  8. ケムステニュース 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2020年版】
  9. 日本国際賞―受賞化学者一覧
  10. 「科研費の採択を受けていない研究者」へ研究費進呈?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP