概要
化学の歴史をつくった約50人を収録。高校・大学の化学の勉強に役立つ16テーマをあつかい、ひとつのテーマを3人の科学者で解説します。研究エピソードや人物エピソードも多数掲載。楽しく読んで知識を身につけよう。(引用:Amazon)
対象
化学の基礎を勉強中の高校生や大学生だけでなく、化学の第一線で研究に携わっている方々が読んでも参考になる書籍です。
内容
- 1章 化学の基礎:ボイル、ドルトン、アボガドロ
- 2章 水素、酸素の発見とフロギストン説:キャヴェッシュ、プリーストリー、シェーレ
- 3章 炭酸ガスと窒素の発見とラヴォアジェ:ブラック、ラザフォード、ラヴォアジェ
- 4章 周期律:メンデレーエフ、デービー、ラムゼー
- 5章 物理化学分野の開祖3人組:ファント・ホッフ、オストヴァルト、アレニウス
- 6章 電気化学:ボルタ、ファラデー、ネルンスト
- 7章 熱力学と化学エネルギー:カルノー、ジュール、ギブズ
- 8章 放射線化学:ベクレル、マリー・キュリー、ユーリー
- 9章 反応速度:ハーバー、アイリング、マーカス
- 10章 化学結合:ケクレ、ルイス、ポーリング
- 11章 光化学:カシャ、ポーター、テュロー
- 12章 高分子化学:シュタウディンガー、カロザース、桜田一郎
- 13章 有機化学:ヴェーラー、グリニャール、ウッドワード
- 14章 量子化学:ハイトラー、マリケン、福井謙一
- 15章 表面分析:ルスカ、シーグバーン、ビーニッヒ
- 16章 有機化合物の構造決定:アストン、コブレンツ、ラービ
解説
本書では、各章ごとに3人の化学者が登場し、各人の発見した原理や法則が解説されています。解説は、化学の基礎を勉強中の高校生や大学生でも理解できるような表現で書かれています。また現象を解説する図も多く掲載されていて、自分が忘れてしまった物理化学の法則も簡単に思い出すことができました。本書では偉人が発見した事象の解説だけでなく、偉人の生涯や当時の時代背景、他の化学者との関係なども同時に紹介されており、化学を専門にしていて登場する原理・法則を知っていても、偉人を解説した読み物として十分楽しめる内容になっています。最初に登場する偉人は、気体の体積を圧力の関係を表すボイルの法則のロバート・ボイルですが、一方の体積を温度の関係を示すシャルルの法則は、ジャック・シャルルではなくシャルルを尊敬していたゲイ・リュサックが発表した内容であると解説されており、冒頭から驚きの事実が書かれています。
本書前半で登場する偉人たちは、歴史では激動の時代だった18世紀、19世紀を中心に活躍しており、今とは異なる社会環境でもどのような環境で化学の探求に打ち込んでいたかが解説されています。また、こぼれ話として偉人の別分野での発見や、関連する日本での発見、筆者(主に藤島昭先生)のストーリーなどが各所に加えられており、これにより本書をより一層読み進めやすくしています。電池を発見したアレッサンドロ・ボルタに関連して、藤島先生がイラクのバクダッドを訪問してバクダッド電池を見せてもらった時の内容と記念写真が特に印象的です。
本書の各所には偉人たちの有名な言葉が1ページを使って記されています。ほとんどが本文で取り上げられている偉人とは別の偉人たちの言葉ですが、日々の研究で悩んでいるときに支えになるような言葉が多く掲載されています。
化学者の人物について、教科書以上のことを知りたいときはWikipediaで調べることがほとんどでしたが、本書ではWikipediaより深い内容を原理の解説とともに知ることができます。そのため、化学を勉強中の高校生や大学生にぜひ読んでもらいたい書籍になります。本書後半では、現代化学にとって重要な物理化学、有機化学、分析化学の分野において重要な発見をした偉人たちが登場しており、すでに基礎をマスターしている化学者にとっても、参考になる内容だと思います。