概要
科学英語を用いて行うプレゼンテーションや論文等の書類作成の方法を,基礎から実践まで具体的な例を用いて平易に解説。増補にあたって,日本機械学会誌2017年1~12月号にかけて連載された「機械屋英語のあれこれ」を追記した。(コロナ社内容紹介より引用)
目次
1. 技術英語の文法の基礎
1.1 はじめに
1.2 第1言語の干渉
1.3 文法
1.4 構文
1.5 関連するその他の事項
1.6 英文をよくするためのアドバイス
2. 科学英語と技術論文
2.1 はじめに
2.2 一般的ルール
2.3 技術論文の書き方
2.4 技術論文の書き方に関する注意事項
2.5 講演での記号・数式・図などの読み方
2.6 論文の投稿と査読
2.7 校正
2.8 まとめ
3. 英語によるプレゼンテーション
3.1 はじめに
3.2 どうすればプレゼンテーションが成功するか
3.3 その他の事項
3.4 まとめと結論
4. 特許明細書における英語のあり方
4.1 はじめに
4.2 英文特許明細書の書き方
4.3 翻訳における注意事項
4.4 翻訳の実例
4.5 まとめ
付録1:日本・米国特許公報の例
付録2:特許関連用語集
補遺:機械屋英語のあれこれ
文法(冠詞)/文法(同義語)/文法(miscellaneous)/英語と誤り/発音とリスニング/方言と訛り/数式の読み方/数式等の書き方/論文の時制/英文書体/プレゼンテーション/博士号
対象
研究室に配属された学生さんから若手研究者までが主の対象で、特にこれから学会発表や論文執筆に臨む人に読んで欲しい書籍です。すでに多くの学会発表をこなしてきた人、数報の論文を発表している人にとっても本書を読むことにより自分に足りない点に気づくかもしれません。特許に関しては、弁理士さんとの共同作業によって明細書を完成させる場合が通常だと思いますが、明細書の内容に関してコメントを求められたときに対応できるよう特許出願に関わり始めた研究者にもお勧めする書籍です。
内容
国際化の流れによって英語を使う場面は増え、研究者だけでなく多くの社会人に英語が求められています。スライドを用いて発表を行う際には、英語でわかりやすいスライドを作って聴衆の前で英語をしゃべられなくてはなりません。メールなどで連絡を取り合う場合、レポートで結果をまとめる場合には、英語の文章を書く必要があります。そんな、文章作成、発表、特許出願に関する技術英語のポイントをまとめたのが今回紹介する本書です。
第1章の技術英語の文法の基礎では、日本人が混乱しやすい文法にポイントを絞って文法の基礎を解説しています。論文を書く際の時制の常識や技術的な説明の中での前置詞の置き方など、基礎とはいえすぐに自分の文章を直すことができる内容が多くまとめられています。理解が難しい構文については、正誤を織り交ぜて解説されてあり、自分の日ごろの文章がどちらになっているかを知ることができます。この章で特に印象的だったのは話し言葉と書き言葉の違いについてで、何となくそれぞれで適切な動詞が異なることは感じていましたが、違いが表にまとめられていて明らかになっています。第2章の科学英語と技術論文では、論文執筆において適切な英語の書き方について解説しています。基本的には文章を簡潔にわかりやすく書くことを強調していて、そのためにはどのような主語を使えばよいのかや、文の態はどのような形にすべきかなどが解説されています。印象に残っているのは、コロン(:)、セミコロンの(;)の使い方についてで、英文を読んでいるときには、何となくこれらの記号の前後をつなげて読んでいますが、英文を書く時の使いどころについては分からず、本書で初めて使い方を勉強しました。文法だけでなく、タイトルの長さやキーワードなど、よりよい論文にするためのアドバイスや論文を投稿する際の注意点など、論文を発表するまでの総合的なアドバイスがたくさん盛り込まれています。この2章では発表についても触れられています。発表中や議論の中で記号や数式、グラフの中のプロットの形を読むのに単語がわからず、うまく説明できなかった経験は誰しもあるのではないでしょうか。そんな記号・数式・図の読み方がまとめられていて、大変参考になりました。第3章は、英語でのプレゼンテーションについて紹介していて英語の発表だけでなく、言語関係なしにプレゼンテーションを行う際の注意点がまとめられています。特に印象に残ったのは、ネイティブと日本人のアクセントの違いで、イントネーションが異なる注意すべき単語が一覧でまとめられています。また、スライドの作り方についても解説されていて、特にフォントの選択が参考になりました。何となく形でフォントを選んでいたので、アクセントをつけるためにあえてフォントを変える場合でも、原則を守れば見やすさを損なうことはないと感じました。第4章の特許明細書における英語のあり方では、米国特許について触れられています。ただ日本語を英語に訳しただけでは、成り立たないということをコンセプトにどう元の日本語から同英語の明細書を作り上げるかを知ることができます。冒頭にも触れましたが、これだけで明細書をバリバリかけるようになるわけではないので、特許の専門家から技術的な意見を求められたときに役に立つ内容だと思います。本書は増補版であり日本機械学会誌2017年1~12月号にかけて連載された「機械屋英語のあれこれ」が最終章に追加されています。学会誌の連載のまとめであるため1トピックが1から2ページでまとめられていますが、様々な内容について本章よりも掘り下げて取り扱われているため、どのトピックも参考になります。特に発音や論文における時制、フォントついてが印象に残り、それぞれについて理解を深めることができます。
論文執筆と学会発表のテクニックは、習うより慣れて習得するものですが、最初はなかなか苦労するもので、過去の自分を振り返るとなんでこんな文章書いたのだろうかや、なぜこんなスライド作ったのだろうかと後悔します。もちろんいい経験ですが、後悔を最小限にするためには事前知識の習得が必要ではないかと思います。そんな中本書は、論文、発表、特許の入門としては最適な教科書であり、すでにこれらをこなしている人にとっても、振り返るのに最適な参考書だと思います。英語の教科書を一人で読み切るのは大変ですが、本書は英語が初心者の読者に寄り添った書き方をしていて読みやすいと思います。また所々に織り込まれているコミカルな挿絵も読み進める助けになりました。実験活動が再開されてから一定期間が経ち論文執筆の機会が出てきている方もいらっしゃると思います。また、研究活動のオンラインでの学会が活発に予定され、発表が予定されている方もいらっしゃるかもしれません。それらの機会の前に自分のスキルを見直すべく本書を読んでいただきたいと思います。