概要
化学系の学部や学科に進みたいと思っても,その先にどんな仕事があるのかがなかなかわからない.この本は,化学を学んだ先にある30の職種を紹介し,化学の道へ進みたい若者をあと押しする.「毎日何をしているか」「やりがいはあるか」「どうすればその仕事につけるか」など働く人の生の声が満載.進路選びの参考書としてはもちろん,化学の世界をしるための入門書としても楽しめる。
対象の読者
- 大学の学部選択を迷っている高校生
- 大学院進学か就職か迷っている学部生
- 社会人
目次
Ⅰ.教育関連
1.大学教員(実験系)
2.大学教員(理論系)
3.研究所の研究員
4.中学校・高校の理科教員
5.科学館学芸員
6.科学行政
Ⅱ.企業での研究開発
7.医薬品の研究開発
8..医療診断技術の研究開発
9。電池の研究開発
10.電子材料の研究開発
11.ポリマー材料の研究開発
12.農薬の研究開発
13.食品の研究開発
14.塗料の研究開発
15.繊維素材の研究開発
16.研究開発の分析支援
Ⅲ.企業での製造・販売・管理
17.品質管理・品質保証
18.化学物質の管理
19.プラント設計・建設
20.営業・販売
21.知的財産担当
22.海外事業
23.経営企画
24.製造現場(工場)
Ⅳ.マスコミ、その他専門職
25.新聞記者(科学担当)
26.出版社理系編集者
27.薬剤師
28.文化財保存・修理
29.弁理士
30.環境事業(下水道)
内容
化学に携わる様々な業種と職種の仕事内容や日常をまとめた本です。インタビュー形式で、仕事内容、志望理由、化学との関連、やりがい、おすすめ、一日のスケジュール、一週間の仕事内容などが紹介されています。この手の仕事を紹介する書籍やWebサイトはよく見かけますが、この本ではとても取り上げている職種がとても幅広く、アカデミックや化学企業だけでなく新聞記者や文化財保存・修理に関する職種までも網羅されています。化学系の学部を卒業しても全員がアカデミックか化学系の企業に就職するわけではないので、化学を勉強する意義を広げるという観点で多くの人に参考になるのではないでしょうか。
この本では、30人の方の仕事について書かれていますが、半分以上は化学系の企業でご活躍されている方についてです。就職活動を行っている学生に対してこの手の情報を各社Webで公開していますが、本書では製薬系から食品、電子材料、分析まで広くカバーしています。自分はとある会社で働いていますが、業界が異なれば、研究開発の手法や使用する実験器具も全く異なるため、大変興味深い内容でした。就活を目的としているわけではないので高校生、大学生だけでなく働いている社会人にも今後のキャリアの参考になると思います。特になかなか公開されない企業での実験風景の写真も多く掲載されていて、この本を読めば仕事が容易にイメージできると思います。ケムスケでは過去に企業の部署について簡単に紹介しましたが、本書では研究開発から、営業、知財まで実際に各部署で働く方の日常が紹介されています。化学を専攻すると、フラスコを毎日振る仕事をイメージするかもしれませんが実際には様々な場面で活躍できることがこの本からわかります。
他の本書の素晴らしい点として、各人のある日の一日を朝から晩までまとめられていることです。人によっては夜遅くまで仕事をされていたり、子育て中で時短勤務されていたり、退社後は取引先の会食があったりと社会人の日常のリアルが載せられているように思えます。もちろん状況は人それぞれですが、このような内容は実際にこの仕事に就かないとわからないことなので、大変参考になる情報だと思いました。
この本は、近畿化学協会の創立100周年を記念して出版されました。本の中に登場するどの方も、化学が面白いからこそそれぞれの仕事に日々励んでいるところを紹介しているのだと思います。自分も、化学が面白いからこそ仕事として続けているのであって(面倒な人付き合いとかもありますが)多くの人がこの本を読んで化学に携わる楽しさを共感してもらえればと思います。