概要
有機合成法について,系統立てて書かれた本です.前版の刊行から約10年,その後に大きく進展したC-C結合形成反応やカップリング反応,有機金属反応についても,反応機構とともに丁寧に解説されています.有機合成反応について,必要な反応が幅広く網羅され,新しい合成法の例もコンパクトにまとめられています.合成のセンスを磨くのに最適の書です.(引用:化学同人)
対象
- 基礎書を学んだ大学生以上
- 基礎書では物足りない大学生
- 大学院有機化学をよりよく理解するために
目次
1章 合成デザイン(逆合成解析/カルボニル基の極性の逆転/合成計画の手順/他)
2章 合成計画における立体化学の重要性(配座解析/非結合相互作用の評価/他)
3章 官能基の保護の概念(N-H基の保護/OH基の保護/ジオールのアセタール保護/他)
4章 官能基変換(アルコールからアルデヒドやケトンへの酸化/化学選択的酸化剤/他)
5章 官能基変換反応(炭素−炭素二重結合の反応/炭素−炭素三重結合の反応)
6章 エノラートアニオンを経由する炭素−炭素単結合の形成(エナミン/アルドール反応/他)
7章 有機金属反応剤を用いる炭素−炭素結合の形成(有機リチウム反応剤/有機銅試薬/他)
8章 パラジウム触媒カップリング反応(パラジウム酸化状態/Trost–Tsuji反応/他)
9章 炭素−炭素π結合の形成(炭素−炭素二重結合の形成/炭素−炭素三重結合の形成)
10章 炭素環状化合物の合成(遊離ラジカルの分子内環化反応/カチオン-π環化/他)
内容
概要にあるように、10年前に刊行された書籍の改定バージョン。タイトルどおり最新有機合成を学べる書籍として人気を博していた書籍だ。みためは以下の黒っぽい本から、薄い青色(緑色)の本に変わった。訳者は檜山カップリングなどで著名な檜山爲次郎氏(京大名誉教授)である。まずはおすすめとする対象であるが、学部で習う基礎書を一通り学んだもの、それでは物足りない人である。つまり、有機合成を専門として大学院に進学する人には大いにオススメする。もちろん専門としないが、有機合成を頻繁に用いる大学院生以上にとっても非常に有用な本である。
この書籍のよいところは、有機合成に特化して、基礎書に書かれている基本的な内容から説明してくれるところだ。
例えば、第2章の合成計画における立体化学の重要性 の部分に関しては、配座異性体や、シクロヘキサンの安定配座などから説明している。
また、第9章の 炭素ー炭素π結合の合成では Wittig反応とは誰がみつけてどんな反応で、安定イリドや不安定イリドに分類できるというところからはじめている。いずれも、基礎書にも掲載されている内容だ。
無論、基礎書の方が詳しいが、いきなり難しい合成の各論をされてもわからないことだらけになることを防いでいる。その基礎的な記載から始まり、基礎書には掲載されていない内容を説明の後、現在でも有機合成のリアルに直面する問題に対する常法たる解法や、理由を反応機構を交えて説明してくれるので頭に入りやすい。
また今回の改定によって、かなりページ数遷移金属触媒をつかったカップリング反応や変換反応も記載されているところも特筆すべきところだ。
あくまでも合成的な観点から記載されているため、自在なものづくりに必要な最低限の知識を与えてくれる。
基礎書を勉強した後の次の書籍としては、大学院有機化学などがあるが、最新の有機合成をしっかり学びたい、ものにしたい場合はこちらのほうが適していると思われる。大学の先生には系統立てて書かれているので、大学院の有機合成化学の講義としてもおすすめである。