[スポンサーリンク]

化学一般

「えれめんトランプ2.0」が発売された

[スポンサーリンク]

元素と素粒子の描かれたカードを使用してデュエル?するカードゲーム「えれめんトランプ」が2.0となって新発売されました。旧製品を生協で衝動買いした筆者が新製品を早速レビューしました。

[amazonjs asin=”B072P2G7HF” locale=”JP” title=”えれめんトランプ2.0″]

えれめんトランプとは

えれめんトランプは洛星中学高等学校の田中 淳先生によって元素を楽しく学習するために考案されたもので、元素と素粒子一つ一つがカードになっています。原子番号だけでなく性質や種別なども記載されているため、取説に書かれている遊び方だけでなく、自分たちで遊び方を考えることができます。旧製品である「えれめんトランプ」は2011年に発売され、非常に好評でケムステでも以前紹介しました。

えれめんトランプ2.0レビュー

旧製品であるえれめんトランプ(以後1.0と省略)と比較してみました。まずパッケージですが、2.0ということと、カードが増えたことを大きくアピールするパッケージに変わっています。ちなみに私の1.0のパッケージは、研究室の窓際に保管していたので退色しています。

パッケージ:左が2.0で右が1.0

次にカードですが、基本的なデザインは変わっていません。しかし裏側のデザインは青から赤に変化しました。2.0のほうがよりトランプっぽい感じがします。1.0も2.0もカードは厚紙製なので、プラスチック製のように爪の間に入って痛い思いもしません。また、研究をさぼって1.0でたくさん遊びましたが、コーティングが施されているので未だに新品である2.0と同じ質感を保っています。

カード表:左が2.0で右が1.0

カード裏:左が2.0で右が1.0

取説のA面ではカードの解説とUNO的な遊びえれめんとを解説しています。帯の色が赤からオレンジに変わり、新しい素粒子カードを使った遊び方についても解説されています。

取説A面:上が2.0で下が1.0

取説のB面は、1.0では麻雀的なえれめんじゃんを紹介していましたが、2.0では大富豪的な元素富豪を紹介しています。もちろん2.0でもえれめんじゃんも遊ぶことができます。不毛なローカルルール論争が起きるかもしれない元素富豪も、オトナのお遊びができるかもしれないえれめんじゃんもエキサイトできると思います。

取説B面:上が2.0で下が1.0

2.0から新しく発見された元素といくつかの素粒子カードが追加されました。ヒッグスのカードは、とても印象的なデザインになっていてニホニウムに負けないインパクトがあります。2.0では白紙カードが一枚追加され、カードを紛失しても補充できます。あるいは新たな元素登録の際に、ユーザー自身でカードを追加することもできます。

左:ヒッグスカード 右:ニホニウムカード

担当者インタビュー

2.0発売に際して化学同人のKさんにインタビューを行いました。

えれめんトランプ2.0はどのような経緯で発売するに至ったのでしょうか。

『えれめんトランプ』は2011年に発売しましたが,翌2012年には新たに2つの元素名が決まりました(フレロビウムとリバモリウム).
第7周期の残り4つの元素も遠からず名前が決まると期待して,そのタイミングで『えれめんトランプ』を改訂したいと考えていました.

化学同人は文科省の『一家に1枚周期表』の制作実務を担当しています.113番元素の命名権が理化学研究所に与えられることが決まり,118番まですべての元素が揃った周期表改訂第10版を制作するべく,2016年秋から玉尾皓平先生や桜井弘先生,寺嶋孝仁先生と内容の見直し等,準備を進めてきました.『えれめんトランプ』の元素カードのイラストと解説は,この『一家に1枚周期表』と連動しています.この周期表改訂にあわせて,『えれめんトランプ』もリニューアルすることになりました.

えれめんトランプ1.0との大きな違いはどこにあるのでしょうか。

元素カードは,ニホニウムのカードも入って6枚増え,合計118枚になりました.
イラストと解説の文章は,今回改訂した『一家に1枚周期表(第10版)』のものにすべて差し替えています.
たとえば,環境に配慮するため蛍光灯に水銀が使われなくなったので,水銀のカードを蛍光灯のイラストから,(メッキの際に水銀が使われた)奈良の大仏に変更しています.

また,トヨタ自動車株式会社のプリウスがジスプロシウムのカードに載っていましたが,トヨタ自動車は「脱レアアース」を目指して研究開発を重ね,昨年12月にはジスプロシウムを使わないプリウスにモデルチェンをしました.したがって,2.0にプリウスの姿はありません.

一方,ここ数年ヒッグス粒子が話題になっています.今回はヒッグスを含めた「ボソンというグループの素粒子カードを新しく7枚追加しました.

もちろん,遊び方もリニューアルをしています.基本の遊び方「えれめんと」では,新しく追加した素粒子カードを使って,「同時出し」ができるようにしました.たとえば,ウィークボソンはクォークやニュートリノ,電子を結びつける役割をもつので,これらの素粒子カードと同時に出せます.残っていると「厄介な」素粒子カードを,より早く手札からなくすことができ,スピーディーにゲームが進められるようになりました.

どこへ行けば実物を見て購入できますでしょうか。

三省堂書店,ジュンク堂書店,丸善,紀伊國屋書店,大学生協,大垣書店など.
ほかに,東京の国立科学博物館や科学技術館,京都大学総合博物館などのショップでも購入できます.
書店・大学生協に向けて,見本展示や,遊び方冊子の配布を進めていくようにしたいと思います.

Webページの更新のご予定は?

更新したいのですが,なかなか時間がなくて,手が回っていません….
5月中を目処に,と思っていますが.
以下のことを進めていく予定です.

・スマホで遊び方を見られるようにする
・全カードデータをwebに掲載する
・遊び方を増やす(募集中です!)
ほかにも,要望がありましたら,検討したいと思いますので,ぜひお聞かせください.

このようにえれめんトランプ2.0は、無限の楽しさを持つカードゲームだと思います。煌びやかなレアカードや強力なモンスターカードは必要ありません。あなたの元素の知識が最大の武器になります。ぜひ皆さんも購入して研究室のメンバーや友達同士でデュエルしてみてはいかがでしょうか。

関連書籍

[amazonjs asin=”B072P2G7HF” locale=”JP” title=”えれめんトランプ2.0″]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」…
  2. 私が思う化学史上最大の成果-1
  3. ポンコツ博士の海外奮闘録⑬ ~博士,コロナにかかる~
  4. 遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
  5. 生命が居住できる星の条件
  6. 最新有機合成法: 設計と戦略
  7. 第20回次世代を担う有機化学シンポジウム
  8. 有機アジド(3):アジド導入反応剤

注目情報

ピックアップ記事

  1. 連続アズレン含有グラフェンナノリボンの精密合成
  2. スケールアップのためのインフォマティクス活用 -ラボスケールから工場への展開-
  3. 2015年化学10大ニュース
  4. C-H酸化反応の開発
  5. 有機合成化学協会誌2018年2月号:全アリール置換芳香族化合物・ペルフルオロアルキル化・ビアリール型人工アミノ酸・キラルグアニジン触媒・[1,2]-ホスファ-ブルック転位
  6. UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立
  7. クリスマス化学史 元素記号Hの発見
  8. 武田薬、米国販売不振で11年ぶり減益 3月期連結決算
  9. 超微細な「ナノ粒子」、健康や毒性の調査に着手…文科省
  10. 反応中間体の追跡から新反応をみつける

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年5月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

有機合成化学協会誌2025年2月号:C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。…

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP