[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

有機化学命名法

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”480790907X” locale=”JP” title=”有機化学命名法: IUPAC2013勧告および優先IUPAC名”]

概要

本書は2013年にIUPACに勧告された、”Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names”を元に有機化学における命名法を網羅したバイブルともいえる書である。

対象

有機化合物を扱う全ての人

解説

既に日本化学会からはHPや化学と工業誌(pdf直リンク)にて情報が出されていたが、2013年に有機化合物の命名法についてかなり大きな変更があった。

例えば、

この化合物をどうやって命名していただろうか?筆者の時代は2-butylprop-2-enalであったが、これを用いることができなくなった。

すなわち、主鎖を選ぶ場合主官能基を含み不飽和結合がある場合はその鎖を主鎖としていたところ、不飽和結合の有無は無視してとにかく一番長い鎖にするのである。よって、この化合物は2-methylidenehexanalとしなければならない。これは官能基が無い炭化水素の場合も同様であるので、アルケンの一種なのに、語尾がアルカンになってしまうなど古い頭にはどうにも馴染めないシステムになった。

また、isopropylなども使用できない、ジエチルエーテルがethoxyethaneになるなど高校レベルの教科書も相当書き換える必要が出てくるような大きな変更である。

ただし、これらの変更は優先IUPAC名(preferred IUPAC name, PIN)であり、PINしか使えなくなったという訳ではない。過去の命名法に準拠した一般IUPAC命(general IUPAC name, GIN)の使用も認められていることから、ただちにacetoneという名称が使えなくなる訳ではない(ただし上記の例の2-butylprop-2-enalのようなものは使えないので注意)。いずれにしても今後はPINによる命名について身に付ける必要があるし、いつの日かGINが使えなくなる日に向けた準備を始めなければならないのであろう・・・

本書では冒頭で主な変更点について列挙されており、そのページは有機化合物を扱う者にとっては必ず読まなければならないものである。研究室には必ず1冊必要であろう。

関連書籍

[amazonjs asin=”480790888X” locale=”JP” title=”化合物命名法 (第2版): IUPAC勧告に準拠”]

この第二版は2016年の刊行であるが、初版は2011年刊行であることに注意が必要である。

Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 【書籍】「世界一美しい数学塗り絵」~宇宙の紋様~
  2. 研究者としてうまくやっていくには ー組織の力を研究に活かすー
  3. 英会話イメージリンク習得法―英会話教室に行く前に身につけておきた…
  4. カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?
  5. DNA origami入門 ―基礎から学ぶDNAナノ構造体の設計…
  6. 新しい量子化学 電子構造の理論入門
  7. よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解…
  8. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ

注目情報

ピックアップ記事

  1. JSRとはどんな会社?-2
  2. ESI-MSの開発者、John B. Fenn氏 逝去
  3. アーノルド・レインゴールド Arnold L. Rheingold
  4. サリチル酸 (salicylic acid)
  5. セス・B・ハーゾン Seth B. Herzon
  6. 1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート:1-Butyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate
  7. ギース ラジカル付加 Giese Radical Addition
  8. 活性ベースタンパク質プロファイリング Activity-Based Protein Profiling
  9. サーバーを移転しました
  10. 有機合成化学協会誌2022年4月号:硫黄置換基・デヒドロアミノ酸・立体発散的スキップジエン合成法・C-H活性化・sp3原子含有ベンゾアザ/オキササイクル

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年5月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP