概要
どうすれば「インパクトがある論文」を書けるのか。
「本当に使える!」と大好評の『できる研究者の論文生産術』に続く第2弾!
原稿の各種スタイルはもちろん、雑誌の選び方、共著論文執筆のヒント、投稿後の対応など実践ポイントを解説した。爽快でユーモア溢れるシルヴィア節は健在で、初めて英語論文を書く大学院生に有益この上ない!
【訳者あとがき】
本書は、2014年に出版されたポール・J・シルヴィア(Paul J. Silvia)『Write It Up: Practical Strategies for Writing and Publishing Journal Articles』の邦訳で、同じく2007年に出版された『How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing』(『できる研究者の論文生産術―どうすれば「たくさん」書けるのか』講談社(2015))の続編ということになる。重点が「ともかく書く」ことにある前書と、「インパクトがある論文を書く具体的手順」にある本書は、2冊で1冊ともいえる関係にあり、どちらを先に読んでも楽しめる。
本書の目標は、《インパクトがある論文》を書くことだ。「論文はインパクトが大切だ。ただ発表すればよいというものではない」の一文(6ページ)に示される通りである。そして、そのための具体的な手順―豊富な執筆・査読経験に根ざした具体的なノウハウや匙(さじ)加減―がステップごとに伝授される。一般的手順にとどまらず、なぜ多くの研究者、特に初心者が、《インパクトがある論文》でなく《どんな論文でも出せればいい》という状態に陥ってしまうのかがユーモアを込めて明快に指摘されているので、執筆のモチベーションがあがり、精神的負担が軽くなる。このあたりは、心理学者の面目躍如たるものだろう。(講談社BooksCrubより)
対象
- 学術論文を執筆しようとする研究者
- 学術論文をいま執筆している研究者
- 卒論・修論・博論などを書いている大学生・大学院生
内容
講談社より送付されてきた書籍。こういった書籍はあまり読んだことがないのだが、最近ありきたりの表現ばかり使っている自分にちょうど嫌気がさしていたので、良い機会だ考え、夜中に読了。上述のとおり、以前ケムステでも紹介した「できる研究者の論文生産術」と同著者が執筆した日本語訳版だ。
[amazonjs asin=”4061531530″ locale=”JP” title=”できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)”]同書はアマゾンなどでも、かなり評価の高い書籍だ。前書が論文原稿を執筆するための”心理作戦“を説明しているのに対して、その続編である本書籍は論文執筆に関するHow toモノ。論文原稿をブラッシュアップするための”大技小技”が述べられている。とはいっても、英文表現の書き方というわけではない(そういったいくつか項目はあるが)。あくまでも「よい」論文を執筆して投稿・発表するまでの方法が記載されている。そして、その内容が気軽に読める読み物形式であるということ。文体も堅苦しくなく、各所にわかりやすい例えやユーモアが散りばめられている。
本書は、計画と準備(I部)、論文を書く(II部)、論文を発表する(III部)の3部構成でそれぞれの内容に各章がある。折角なので章ごとの概要と記憶に残った文章をすこしだけ紹介しよう。
I部 計画と準備
第一章:投稿論文雑誌の選び方。論文選定の指標などの説明がされている。
「雑誌を選ぶタイミングとして最適なのは、研究を開始する前だろう」
「研究開始前に雑誌を選んでおくというのが奇妙にしか聞こえないようなら、不採用になったときの投稿先を論文執筆前に考えておくという考えも、妄想や戯言にしか聞こえないのだろう」
第二章:語調と文体。論文というよりも文章を書くときに確認しておきたい内容が記載されている。
「無知のはびこるところでは、当然ながら極論もはびこるわけで、利いた風な説ー「短縮形は使うべからず!」..(中略) といった説が、たいがいの学科で、ライティングの指導としてまかりとおってしまう」
「ライティングの本を読むこと。少なくとも年1冊は読む」
第三章:共著論文執筆のヒント。このような内容で一章書いてある書籍も珍しい(笑)。
「共著論文における最大の間違いは、執筆を分担し、並行して書き進めることだろう」
II章 論文を書く
第四章:「序論」を書く。構成用テンプレートを準備するとよいとのこと。
よい序論冒頭部分というのは、逆三角形のように、概論からはじまって研究への詳細へとフォーカスしていくものだ。
第五章:「方法」を書く。このセクションは書きやすいし、書き損なうことも少ない。なぜなら実際にやったことだから。
「ごまかすのは」無理といった金言を思い出すのもよいだろう。
第六章:「考察」を書く。伝えたい内容を再確認し、重要な諸問題との関係性を浮き彫りにする。
ベットの下に「欠点」を隠してどうにかなることなどありえない。
第八章:奥義の数々。
III部 論文を発表する
第九章:雑誌とのお付き合い
第十章:論文は続けて書く
総じて読み物として大変面白いので、これをよんで良い論文を書く技術を身に付けようと思わず、気軽に寝る前などに読むのがよいのではないでしょうか。
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