[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Guide to Fluorine NMR for Organic Chemists

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”111883108X” locale=”JP” title=”Guide to Fluorine NMR for Organic Chemists”]

概要

Following its well-received predecessor, this book offers an essential guide to chemists for understanding fluorine in spectroscopy. With over 1000 compounds and 100 spectra, the second edition adds new data – featuring fluorine effects on nitrogen NMR, chemical shifts, and coupling constants.

対象

  •  フッ素の化合物を取り扱い、NMR測定を行う研究者

解説

19F NMRに関する書籍です。19F NMRは、1H, 13C, 31P, 29SiなどとともにメジャーなNMR測定核種であり、フッ素化合物を取り扱う場合には重要な分析手段です。特徴は、19Fの天然存在比がほぼ100%であること、1Hのように定量可能であること、多くの場合特殊なプローブなしで測定できることがあげられます。本書籍では、その19F NMRの測定データが系統立てて紹介されています。

第一章のイントロダクションに続き、第二章のフッ素置換基の基本的な性質、第三章のCF誘導体、第四章のCF2誘導体、第五章のCF誘導体、第六章の複雑な化合物、第七章のヘテロフッ素結合誘導体の各化学シフト、結合定数の傾向を解説しています。F NMRでは、F-Fだけでなく、H-Fカップリングによりピークが分裂するため、分裂パターンが複雑になります。また、1Hデカップリング13C NMRでもC-Fカップリングにより分裂したピークが観測されます。本書では、このような分裂パターンをスペクトルにより確認することができます。

私が特に参考になると思うのは第七章で、思わぬピークが出てきたときに炭素以外と結合している原料や副生成物の同定に有用な情報が載っています。例えば、BF3は、-126 ppmにピークが観測され、PF6は、F NMRの-72 ppmと31P NMRの52 ppmにピークが観測されるそうです。

近年、盛んにおこなわれているフッ素置換基導入に関する研究では、FNMRによる構造解析と純度の決定、不純物の確認は大変重要な作業であると言えます。特に、スペクトルを単に比較するだけでなく分裂パターンや結合定数を正しく理解する必要があると私は考えます。その際にこの本は有用だと思います。

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. Heterocyclic Chemistry
  2. ハートウィグ有機遷移金属化学
  3. 2009年8月人気化学書籍ランキング
  4. 透明金属が拓く驚異の世界 不可能に挑むナノテクノロジーの錬金術
  5. 炭素文明論「元素の王者」が歴史を動かす
  6. Dead Ends And Detours: Direct Wa…
  7. フタロシアニン-化学と機能-
  8. 天然物化学

注目情報

ピックアップ記事

  1. 美しい化学構造式を書きたい方に
  2. MI-6 / エスマット共催ウェビナー:デジタルで製造業の生産性を劇的改善する方法
  3. メガネが不要になる目薬「Nanodrops(ナノドロップス)」
  4. LG化学より発表されたプラスチックに関する研究成果
  5. マテリアルズ・インフォマティクスにおける初期データ戦略 -新規テーマでの対応方法をご紹介-
  6. 宇部興産、MCPTや京大と共同でスワン酸化反応を室温で反応させる技術を開発
  7. デュボア アミノ化反応 Du Bois Amination
  8. 環境ストレスに応答する植物ホルモン
  9. 有機合成化学協会誌2019年6月号:不斉ヘテロDiels-Alder反応・合金ナノ粒子触媒・グラフェンナノリボン・触媒的光延反応・フェイズ・バニシング
  10. 帝人、EV向けメンブレンのラインを拡充

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

触媒化学を基盤に展開される広範な研究

前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に…

「産総研・触媒化学研究部門」ってどんな研究所?

触媒化学融合研究センターの後継として、2025年に産総研内に設立された触媒化学研究部門は、「触媒化学…

Cell Press “Chem” 編集者 × 研究者トークセッション ~日本発のハイクオリティな化学研究を世界に~

ケムステでも以前取り上げた、Cell PressのChem。今回はChemの編集…

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー