[スポンサーリンク]

その他

化学の歴史

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”448009282X” locale=”JP” title=”化学の歴史 (ちくま学芸文庫)”]

内容

 人間の祖先が初めて道具を使いはじめた時、彼らは目にふれた自然の産物を、そのまま利用した。大きな動物の大腿骨は手ごろの棍棒になったし、木から折った枝も同じ役に立った。岩石は便利な飛び道具だった。
何千年という時がたつうちに、人間は岩石を刻んで刃や握りをつけることも覚えたし、握りの形にした木の柄に岩石をとりつけることも学んだ。しかし所詮、岩石は岩石であり、木は木であるにすぎなかった。
ところが物質の性質が変化するようなことも起こった。落雷で森が火事になると、後に残る粉状の黒い灰はもとの木とは似ても似つかぬものになっていた。肉が腐っていやな臭いを出すこともあったし、果汁を放置しておくと、酸っぱくなったり、飲むと妙に浮き浮きするようにもなった。
われわれが今日化学とよんでいる科学の主題は、物質の性質のこのような(最後に人間が発見したように、構造の根本的変化を伴った)変化である。物質の性質や構造の根本的な変化が化学変化である。

(第1章 古代 火と石 冒頭部分を引用)

対象

・化学史に興味を持つ学生、研究者
・化学を教える立場にある方

解説

上記のイントロで始まる本書。著者はSF作家の巨匠として知られ、過去に医学部生化学の助教授も務めたキャリアを持つアイザック・アシモフ博士。本書のタイトルだけを見ると退屈な印象を持ってしまいがちだが、いざ読み始めてみると小説のような感覚で読める。(さすがはアシモフ先生である)
高校で化学を履修している方は特におすすめ。高校化学の教科書ではすでにでき上がった概念を学ぶことが多い。例えば、

物質の基本的な成分である元素のそれぞれには、原子というきわめて小さい固有の粒子がある。(化学Ⅰ改訂版 実況出版から引用)

これは高校化学の教科書の前半に出てくる1文。原子についての説明文である。原子という概念は化学の根底にあって大変重要なものだが、その成り立ちはこの1文からでは全く分からない。この概念にたどりつくには、物質の秘密を解き明かしたいと願って思考錯誤してきた科学者の仕事をひも解く必要がある。それがこの小さな一冊の本によくまとまっている。構成は以下の通り。

1章:古代
2章:錬金術
3章:転換期
4章:気体
5章:原子
6章:有機化学
7章:分子構造
8章:周期表
9章:物理化学
10章:合成有機化学
11章:無機化学
12章:電子
13章:核をもった原子
14章:核反応

化学という学問がどのような経験と思考の上に作り出されてきたかを知ることこそが、化学の本当の醍醐味ではないだろうか。
文庫本としてはやや高価ではあるものの、その価値は十分であると言えるのでぜひ一読されたし。

関連書籍

[amazonjs asin=”487698283X” locale=”JP” title=”現代化学史: 原子・分子の科学の発展”][amazonjs asin=”4150114854″ locale=”JP” title=”われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)”][amazonjs asin=”4150105553″ locale=”JP” title=”ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)”][amazonjs asin=”4150500215″ locale=”JP” title=”空想自然科学入門 (ハヤカワ文庫 NF 21 アシモフの科学エッセイ 1)”]

chiaki

投稿者の記事一覧

国立大学の研究員として勤務。専門は有機合成化学、触媒化学。現象を「分子」の視点でとらえることが何よりも楽しみ。特技は囲碁、棋力はアマチュア2段程度。

関連記事

  1. 理系のための口頭発表術
  2. 東大キャリア教室で1年生に伝えている大切なこと: 変化を生きる1…
  3. 次世代医薬とバイオ医療
  4. 免疫(第6版): からだを護る不思議なしくみ
  5. くすりに携わるなら知っておきたい! 医薬品の化学
  6. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  7. 誰も教えてくれなかった 実験ノートの書き方 (研究を成功させるた…
  8. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方

注目情報

ピックアップ記事

  1. 究極のナノデバイスへ大きな一歩:分子ワイヤ中の高速電子移動
  2. クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞2017」を発表
  3. MT-スルホン MT-Sulfone
  4. のむ発毛薬の輸入承認 国内初、年内にも発売へ
  5. 森林総合研究所、広葉樹害虫ヒメボクトウの性フェロモン化学構造を解明
  6. 住友化学、イスラエルのスタートアップ企業へ出資 ~においセンサーを活用した新規ヘルスケア事業の創出~
  7. 人と人との「結合」を「活性化」する
  8. 大久野島毒ガス資料館
  9. 2011年ノーベル化学賞予想ーケムステ版
  10. 天然物化学

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP