[スポンサーリンク]

仕事術

なぜあなたは論文が書けないのか

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4779217245″ locale=”JP” title=”なぜあなたは論文が書けないのか?”]

概要

―ネタがあっても論文にならない,書こうと思っても進まない,書く時間がない,アクセプトされない
論文が書けない理由から迫る症状別解決策!
従来のマニュアル本とは一線を画す,論文執筆のための新機軸!

多くの若手医師・研究者の研究,学会発表,論文執筆を指導してきた著者が,その経験から見えてきた「論文が書けない理由」を40のQuestionにまとめ,珠玉のメッセージと方法論だけはない独自の視点で解決します。
簡潔な構成なので,忙しい合間にも読み進められます。

目次の40のQuestionを是非ご覧ください! あなたの論文が書けない理由がきっと見つかります。(内容紹介より)

対象

  • 論文執筆経験に乏しい若手研究者(大学院生~博士研究員)
  • 論文執筆を指導する立場にある駆け出し助教~PI

解説

2016年7月に発刊されたばかりの論文執筆ノウハウ本のひとつ。先日レビューした佐藤雅昭 著「なぜあなたの研究は進まないのか」の姉妹本として同時刊行されている。

こちらも前著と同じく、論文執筆における「Question」が40個掲げられ、それぞれの末尾に著者なりの考え方が「Message」として掲載される構成になっている。「論文が書けない理由」を掘り下げ解決策を提示していくことで、論文執筆に伴う負担を減じていく、というアプローチが独特であり、そのためにQuestionが提示されている。本書もやはりテクニック/枝葉末節的な話ではなく、どちらかというと心構え的な話が多くなっている。下記のQuestionが真っ先に取りあげられていることからも、その執筆姿勢はうかがえるだろう。

Q1 「何のためにあなたは論文を書くのか、明確な答えがあるか?」

論文を書くのは大変な作業なので、明確な目的がある都内とでは、ゴールにたどり着けるかどうかが変わってくる可能性があるからです。(中略)論文をキャリアアップの道具とだけ見ていたのでは、だんだんその作業は空しくなるでしょう。もっと純粋に追求するものがなければ、貴重な人生の一部を費やす価値が無いように思えます。究極的には、「何のために生きているか?」「何のために仕事をしているか?」という人生のミッションに関わる問題であると言えるでしょう。

後の章では、ノウハウ的側面が濃い話になっていくが、最後の一章を割いて「書いただけで終わらないように」との観点に言及があるのはユニークな点だ。たとえば下記のQuestionなどは、人間くさい心理に関わる意外に重要な話と思われるが、この辺りに触れている論文読本はあまり多くないように思われる。

Q38 「書き上げたはずの論文が放置されていないか?」

いろいろな人が研究・論文に取り組むのを見てきましたが、「論文が書けない」という人が、全くWord文書が埋められないと言う人は稀です。多くの場合、論文は一通り書いている(ように見える)のに、それをaccept/publicationされるところにまで持っていけない(いかない)のです。(中略)実は論文を書いた側の問題で一番根が深いのは、初稿を書き終えた段階で燃え尽きてしまって、それ以上の手を打とうとしなくなることです。(中略)時間をかけて論文を見て貰った時点で、その論文は既にあなただけのものではないということです。

このQuestionとコラムでは「忙しい指導教官に論文を読んで貰い、指導を受けやすくする工夫」などについても、丁寧に心構えが述べられている。要はどんなお願いをするにしても、相手を立ててアプローチすることで上手く行く、ということに尽きるのだが、論文執筆初心者はそこまでの余裕が無いため、意外と配慮を落としがちではないだろうか。

以前紹介した「できる研究者の論文生産術―どうすれば『たくさん』書けるのか」の内容にも通ずる点が多く見られる。

論文執筆にどうにも気乗りしない人、論文執筆を行ったが途中で心折れてお蔵入りさせてしまった人、などは一読・併読してみるのが良いだろう。

関連書籍

[amazonjs asin=”4779217253″ locale=”JP” title=”なぜあなたの研究は進まないのか?”][amazonjs asin=”4061531530″ locale=”JP” title=”できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 京都大学人気講義 サイエンスの発想法
  2. 手で解く量子化学I
  3. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  4. 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】
  5. 化学知識の源、化学同人と東京化学同人
  6. Small Molecule Medicinal Chemist…
  7. 研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ
  8. 2009年10月人気化学書籍ランキング

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機リチウム試薬 Organolithium Reagents
  2. ゼロから始める!量子化学計算~遷移状態を求める~
  3. 湾曲したパラフェニレンで繋がれたジラジカルの挙動  〜湾曲効果による電子スピン状態の変化と特異性〜
  4. 半導体領域におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用-レジスト材料の探索、CMPの条件最適化編-
  5. 使い方次第で猛毒、薬に
  6. 秋の褒章2013-化学
  7. 令和3年度に登録された未来技術遺産が発表 ~フィッシャー・トロプシュ法や記憶媒体に関する資料が登録~
  8. パオロ・メルキオーレ Paolo Melchiorre
  9. JAMSTEC、深度1万900mに棲むエビから新酵素を発見 – バイオ燃料応用に期待
  10. エナンチオ選択的ジフルオロアルキルブロミド合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

ジアリールエテン縮環二量体の二閉環体の合成に成功

第 654回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院松田研究室の 佐竹 来実さ…

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

触媒化学を基盤に展開される広範な研究

前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に…

「産総研・触媒化学研究部門」ってどんな研究所?

触媒化学融合研究センターの後継として、2025年に産総研内に設立された触媒化学研究部門は、「触媒化学…

Cell Press “Chem” 編集者 × 研究者トークセッション ~日本発のハイクオリティな化学研究を世界に~

ケムステでも以前取り上げた、Cell PressのChem。今回はChemの編集…

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー