[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

活性酸素・フリーラジカルの科学: 計測技術の新展開と広がる応用

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759813810″ locale=”JP” title=”活性酸素・フリーラジカルの科学: 計測技術の新展開と広がる応用 (CSJカレントレビューシリーズ)”]

内容

CSJカレントレビューの第21巻です。CSJカレントレビューの概要は化学のつぶやきにて紹介しましたが、特定の研究トピックについて基礎項目から最新の研究まで専門外の読者にもわかりやすいように紹介しているシリーズです。

今回紹介する第21巻では、題名の通り活性酸素・フリーラジカルの科学についての紹介です。PartⅠの基礎概念と研究現場というトピックでは、

  • 著名な研究者による座談会の議論
  • 活性酸素およびフリーラジカルの基礎物性と測定方法
  • 金属酵素の基本構造と反応

という内容を通して基本事項を紹介しています。PartⅡの研究最前線では、

  • 活性酸素の生物への影響と対策
  • 固体触媒の反応
  • 一重項酸素の定量

などについて16の最新研究トピックについて紹介しています。最後のPartⅢの役に立つ情報・データで、ブレイクスルーとなった論文の一覧と用語解説を付属しています。

 

対象者

化学を専攻する学部生から研究者

 

解説

タイトルだけを見ると生物化学の内容を主に取り扱う本だと思うかもしれませんが、まったく違います。生物化学的な内容は40%ほどで、50%は多孔体や金属酸化物といった固体触媒にかかわる研究を紹介しています。固体表面上の反応機構を理解することは触媒化学にとっては非常に重要で、酸素が関わる反応では活性酸素種がキーとなっていることから本のトピックと繋がるようです。健康食品や化粧品では、とことん嫌われ者にされている活性酸素ですが、触媒化学では必須の化学種であることが興味深くこの本を読んで思いました。

また、本書ではESRスペクトルが幾度も話題に上がります。筆者は、ESRは測定したことがなく、漠然とラジカルを観測できる機器だとしか知りませんでしたが、実際の研究への使用例をこの本で知ることができました。

このように、生物化学の興味がある読者だけでなく、触媒化学を研究している読者にも読んでいただきたい本です。もしかしたら、生物化学と触媒化学の絶妙なコラボレーションが思いつくかもしれません。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759813799″ locale=”JP” title=”生物活性分子のケミカルバイオロジー: 標的同定と作用機構 (CSJ Current Review)”]
Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 【書評】元素楽章ー擬人化でわかる元素の世界
  2. 化学物質はなぜ嫌われるのか
  3. アメリカへ博士号をとりにいく―理系大学院留学奮戦記
  4. トップ・ドラッグ―その合成ルートをさぐる
  5. ネイティブスピーカーも納得する技術英語表現
  6. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5
  7. 【書評】続続 実験を安全に行うために –失敗事例集–
  8. ここまで進んだ次世代医薬品―ちょっと未来の薬の科学

注目情報

ピックアップ記事

  1. ベンゼンの害、低濃度でも 血液細胞に損傷
  2. 「細胞専用の非水溶媒」という概念を構築
  3. 金属スカベンジャーを試してみた
  4. リンダウ会議に行ってきた④
  5. Side Reactions in Organic Synthesis II
  6. 化学的に覚醒剤を隠す薬物を摘発
  7. 特許資産規模ランキング トップ3は富士フイルム、LG CHEM、住友化学
  8. ボンビコール /bombykol
  9. 高校生が河川敷で化学実験中に発火事故
  10. ニンニクの主要成分を人工的につくる

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年8月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー