[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Lead Optimization for Medicinal Chemists

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”B00C5718FC” locale=”JP” title=”Lead Optimization for Medicinal Chemists: Pharmacokinetic Properties of Functional Groups and Organic Compounds”]

内容

医薬候補品に対する構造変換が小さなものであっても、薬物動態に与える影響は大きなものである。本書は官能基が薬物動態に与える影響を包括的に記した、メディシナル化学者によるメディシナル化学者のために書かれた書籍である。このコンパクトなガイドは、新規医薬の開発にファクトベースのインスピレーションを与えるだろう。主にはメディシナル化学者を対象としているが、化学・薬学を学び、製薬業界への就職準備を行なう大学院生などにも適するだろう。(内容紹介を抄訳)

対象

  • 創薬(メディシナル)化学に取り組む、もしくは興味を持つ研究者

解説

低分子医薬開発においては、標的への結合定数および選択性向上を意識するだけでは不足である。官能基の体内互換性、化合物の代謝安定性、経口投与性など、薬物動態(Pharmacokinetics, PK)やADMETも考慮した上で、構造最適化を進める必要がある。

2012年刊行の本書は、官能基変換/構造変換が薬物動態に及ぼす影響のデータを包括した辞書的書物であり、以下の構成をとっている。

<Part I>
1章:創薬プロセス
2章:リード最適化

<Part II>
3~76章:化合物群ごとの薬物動態

第1章では血漿内半減期(t1/2)、経口バイオアベイラビリティ(F)、血漿蛋白結合率(pb)、分布体積(V)、クリアランス(CL)などの基本事項を解説し、これらPK値の改善と低分子医薬開発の関連・概要を示している。

第2章では、経口バイオアベイラビリティ、血漿半減期、血液脳関門の通過、CYP阻害/誘導、hERG相互作用、毒性回避の改善などに対する指針を各論的に述べ、PK改善の実例を示している。

第3~76章が官能基別データベースであり、95%以上のページ数を占めている。各官能基毎にPKに影響を与える構造特性などが解説されており、問題に直面したときの解決法(例えばフッ素導入や生物学的等価体への置換)なども端的に記されている。

構造活性相関(SAR)はin vitro試験で簡単に得られる一方、PK/ADMET―構造相関は長期にわたる高価なin vivo試験が必要となるため、体系的に調べることが難しい。またそもそも臨床試験に供される化合物の少なさから、ヒトにおけるデータは集めにくい。ゆえにこのようなPK/ADMET―構造相関がリストアップされている書籍は、創薬化学者にとって貴重なリファレンスになるだろう。

本書より抜粋

本書より抜粋

本書に取りあげられる実例は、主には開発現場で医薬候補として選び出された化合物(市販品だけでなく開発失敗品も含む)であるため、PK最適化の前段階にある、構造活性相関研究とその構造展開にも参考にできる情報は多いだろう。

関連書籍

[amazonjs asin=”B019OMDRU4″ locale=”JP” title=”Drug-Like Properties: Concepts, Structure Design and Methods from ADME to Toxicity Optimization”]

関連リンク

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 光化学フロンティア:未来材料を生む有機光化学の基礎
  2. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際ま…
  3. Dead Ends And Detours: Direct Wa…
  4. ヒューマンエラーを防ぐ知恵 増補版: ミスはなくなるか
  5. 有機合成の落とし穴
  6. 次世代シーケンサー活用術〜トップランナーの最新研究事例に学ぶ〜
  7. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方
  8. 【書籍】機器分析ハンドブック3 固体・表面分析編

注目情報

ピックアップ記事

  1. ロベルト・カー Roberto Car
  2. ヴェンキィ・ラマクリシュナン Venkatraman Ramakrishnan
  3. 【速報】2012年ノーベル化学賞発表!!「Gタンパク質共役受容体に関する研究」
  4. 富士通、化合物分子設計統合支援ソフト「キャッシュ」新バージョンを販売
  5. ホウ素の力でイオンを見る!長波長光での観察を可能とするアニオンセンサーの開発
  6. 研究者1名からでも始められるMIの検討-スモールスタートに取り組む前の3つのステップ-
  7. 医薬品の品質管理ーChemical Times特集より
  8. カプロラクタム (caprolactam)
  9. 採用面接で 「今年の日本化学会では発表をしますか?」と聞けば
  10. 柴崎・東大教授が英化学会メダル受賞

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年9月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー