内容
医薬候補品に対する構造変換が小さなものであっても、薬物動態に与える影響は大きなものである。本書は官能基が薬物動態に与える影響を包括的に記した、メディシナル化学者によるメディシナル化学者のために書かれた書籍である。このコンパクトなガイドは、新規医薬の開発にファクトベースのインスピレーションを与えるだろう。主にはメディシナル化学者を対象としているが、化学・薬学を学び、製薬業界への就職準備を行なう大学院生などにも適するだろう。(内容紹介を抄訳)
対象
- 創薬(メディシナル)化学に取り組む、もしくは興味を持つ研究者
解説
低分子医薬開発においては、標的への結合定数および選択性向上を意識するだけでは不足である。官能基の体内互換性、化合物の代謝安定性、経口投与性など、薬物動態(Pharmacokinetics, PK)やADMETも考慮した上で、構造最適化を進める必要がある。
2012年刊行の本書は、官能基変換/構造変換が薬物動態に及ぼす影響のデータを包括した辞書的書物であり、以下の構成をとっている。
<Part I>
1章:創薬プロセス
2章:リード最適化<Part II>
3~76章:化合物群ごとの薬物動態
第1章では血漿内半減期(t1/2)、経口バイオアベイラビリティ(F)、血漿蛋白結合率(pb)、分布体積(V)、クリアランス(CL)などの基本事項を解説し、これらPK値の改善と低分子医薬開発の関連・概要を示している。
第2章では、経口バイオアベイラビリティ、血漿半減期、血液脳関門の通過、CYP阻害/誘導、hERG相互作用、毒性回避の改善などに対する指針を各論的に述べ、PK改善の実例を示している。
第3~76章が官能基別データベースであり、95%以上のページ数を占めている。各官能基毎にPKに影響を与える構造特性などが解説されており、問題に直面したときの解決法(例えばフッ素導入や生物学的等価体への置換)なども端的に記されている。
構造活性相関(SAR)はin vitro試験で簡単に得られる一方、PK/ADMET―構造相関は長期にわたる高価なin vivo試験が必要となるため、体系的に調べることが難しい。またそもそも臨床試験に供される化合物の少なさから、ヒトにおけるデータは集めにくい。ゆえにこのようなPK/ADMET―構造相関がリストアップされている書籍は、創薬化学者にとって貴重なリファレンスになるだろう。
本書に取りあげられる実例は、主には開発現場で医薬候補として選び出された化合物(市販品だけでなく開発失敗品も含む)であるため、PK最適化の前段階にある、構造活性相関研究とその構造展開にも参考にできる情報は多いだろう。
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