内容
レアメタル(希少金属)は,スマホや電池,ハイブリッド車など,快適な暮らしを支えるハイテク製品に欠かせない.最大消費国といえる日本も,レアメタルは輸入が頼りだ.本書では,資源の問題,金属の利用史や希土類(レアアース)の素性を眺め,113番元素で話題の「元素合成」もとりあげる.関連科学者の逸話,資源確保と国際情勢のからみ合いを紹介しつつ,金属(化学)なしでは立ち行かない現代社会の素顔を暴き,遠い未来も展望する.金属を制する者は世界を制す――その事実に思い至れば,スマホを見る目も変わるだろう.(引用:化学同人)
対象
- 一般
解説
近年話題のレアメタルに関しての書籍。多くの書籍がでており、テレビでも報道されているので一般的にも、「レアメタル」とう単語ぐらいは知れ渡っているといえる。内容欄にあるように現在の最先端材料にはかかせない、希少金属だ。
本書は翻訳本であり、著者はキース・ベロニースという、サイエンス・ライター。日本でもよく知られる「ギズモード」の科学関連ブログ版「iO9」で活躍しているとのこと*。サイエンス・ライターが海外では(日本でも徐々に活躍している人はみられるが)しっかり職業になっているのが素晴らしい。本書は、米国で2015年1月に出版されたベロニース氏の書籍「Rare: The High-Stakes Race to Satisfy Our Need for the Scarcest Metals on Earth」(下図)を、東京理科大学教授の渡辺正氏が翻訳したものだ。海外で人気を博した書籍であるため、翻訳本の出版に至ったのだろう。
さて、肝心の内容であるが、読み物形式でレアメタルに関する16の話を語っている。ひとことで言うと大変読みやすい。原著の中身がみれず、翻訳文をみての感想なので正確ではないが、学術的な書き方ではなく、わかりやすいタッチで様々な比喩をつかいながら執筆されている。
例えば、
ppmやpubはさまざまな場面でつかう。
いまの一文を読むのに5秒かかったら読者は人生80年の2ppbほど消費したこととなる。なにしろわずかな割合だから耳にしたときは注意しよう。
たとえば、浄水場の水に168ppbのホルムアルデヒドを検出−−−
とメディアが大騒ぎしても、全く安全な濃度の二桁も下だから、おびえる必要は何ひとつない。
といった感じだ。書籍の中身はかなりマニアックなところまで話しているが、高校化学を覚えていれば読みにくいといったことはないだろう。
とはいえど、レアメタルの書籍なので様々な金属元素の名前がでてくる。元素に関する書籍のレアメタルの部分を抜き出して、より興味を引くように、かつレアメタルをかじっている人の興味も損なわないように配慮された内容であるといえる。他のレアメタルの書籍はあまり読んだことがないが、マニアックなところまで記載されていて、一般にも読みやすい書籍はあまりないだろう。そういう意味(難しい科学をわかりやすく書くということ)でも参考になった。
以上、体系的にレアメタルを学ぶものではなく、読み物として、自身の知識拡充として読む書籍であり、時間の空いた際に気軽に読むことをおすすめしたい。
*調べてみたところ、2014年3月から記事は執筆していないようだ(こちら)。忙しくなったのか、書籍執筆などに勤しんでいるのかはわからない。主にアニメにでてくる科学の話を解説していた模様。