内容
A practical handbook for chemists performing bond forming reactions, this book features useful information on the synthesis of common functional groups in organic chemistry.
• Details modern functional group synthesis through carbon-heteroelement (N, O, P, S, B, halogen) bond forming reactions with a focus on operational simplicity and sustainability.
• Summarizes key and recent developments – which are otherwise scattered across journal literature – into a single source
• Contains over 100 detailed preparations of common functional groups
• Included 25 troubleshooting guides with suggestions and potential solutions to common problems.
• Complements the text in enhanced ebook editions with tutorial videos where the author provides an introduction to microwave assisted chemistry(Wiley社内容紹介より)
対象
- 有機合成を行う大学院生~研究者
- 官能基別に最新の反応を学び、使いたい研究者
解説
本書は内容で記したとおり、官能基別に、有機合成反応によるそれらの構築法を記した書籍である。全685ページあり、タイトルから想定すると、古典的ではあるが信頼性が高い変換反応を詳細な実験項やコツなどとともに述べている書籍かとおもいきや、扱っている変換反応が最新のものが大半であった。
著者は米国バックネル大学のRobert A. Stockland Jr教授。正直、研究者としては名前があまり知られていないが、教育にはかなり力を入れているようだ。
全7章構成で、1章では合成を成功させるにはなにが必要か?というところからはじまる。具体的には、合成のゴールはなにか?グローブボックスは必要か?溶媒は脱気が必要か?そもそも溶媒は必要か?どうやって化合物を精製したらよいか?どうやって化合物を保存するかなどに一問一答で答えている。その後、例を交えて実用的に合成に使われる古くて新しい条件や触媒、反応条件について述べている。2章からは実際に官能基別に反応を紹介していくというスタイルだ。アルコール、エーテル(2章)、アミン、アミド(3章)、有機リン化合物(4章)、チオエーテル・スルホン(5章)、有機ボロン酸、ボロン酸エステル(6章)、有機ハロゲン化物(7章)の合成を紹介している。
いわゆる、カルボニルの化学はほとんど含まれておらず、クロスカップリング反応に使える官能基やそれを促進する触媒の合成に特化したような内容であった。実際の中身をみてみると、官能基をつくる反応例が並べられていて、その反応の基質適用範囲(反応例の数)と最大収率が記載されている。有機合成化学に共通したことであるかもしれないが、中身の文章を読む必要はあまりなく、反応式を眺めているだけでも”読めて”しまう。
その中でも実用的な反応に関しては実験項とともに紹介している(およそ100反応)。著者が有機リン化合物の合成反応を研究しているからか、有機リン化合物の合成が非常に多い(250ページ)。個人的にはエーテルの合成に興味があったので、最新の反応とその文献が網羅されているので、有用であった。一般的にはクロスカップリング反応の使える条件や、これから有機リン化合物を取り扱おうと考えている人には大変参考になると思う。