[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4860260406″ locale=”JP” title=”最新 創薬化学 -探索研究から開発まで- 上巻 改訂第2版”][amazonjs asin=”4860260619″ locale=”JP” title=”最新 創薬化学 -探索研究から開発まで- 下巻 改訂第2版”]

内容

医薬品開発に携わる多くの研究者にメディシナルケミストリーの本質と全体像を明らかにした本書は、この改訂第2版でポストゲノムからさらに次なる局面に進展しつつある創薬研究に新たな展望を指し示します。

対象

  • 企業もしくはアカデミアで低分子医薬探索に取り組む学生・ポスドク・研究者。
  • メディシナルケミストリーの経験に乏しい有機合成化学者。
  • 薬学部で創薬化学の講義を担当する教員。

解説

本書は40以上の章立て・上下巻という骨太の構成を採る「日本語で読める、メディシナルケミストリーの教科書」である。基本から応用まで幅広く体系だてて網羅され、各々には必要十分な記述がある。創薬化学者の座右の書・バイブルとして、長きにわたり高評価を受ける名著の一つである。

学生時代に有機合成化学の先端研究を行なったうえで製薬企業に入社した研究者のほとんどは、メディシナルケミストリーのバックグラウンドに乏しい。そのような研究者が最初に読むべき書籍と位置づけられている。創薬分野にも星の数ほどの専門書があるが、それぞれの有機的繋がりを理解するために必要となる、広汎な背景事項・歴史・文脈を学べる書籍は多くない。言い換えれば、創薬化学における入門書―専門書間のギャップを埋める役割を果たしてくれるのが本書である。実際、製薬企業内での勉強会などにもよく活用されているそうだ。

1998年の邦訳第1版から全面改定され、2006年に邦訳第2版が発刊された。伝統的な創薬化学全般を扱う教科書であるため、現代でも通用する原理原則的な記述がほとんどを占める。刊行年の古さは、思いの外問題にならないと思われる。

しかし原著の「The practice of medicinal chemistry」には第4版(2015)がごく最近登場した。邦訳第2版から10年近く経っていることを考えると、最新事情まで取り込みたいと考える意欲的な研究者ならば、原著をあたってみるのも良いだろう。(邦訳版の前書きを読むと分かるが、翻訳作業に携われる人的資源が不足しているようで、間近の邦訳刊行は望み薄かと思われる)

[amazonjs asin=”0124172059″ locale=”JP” title=”The Practice of Medicinal Chemistry, Fourth Edition”]

関連書籍

[amazonjs asin=”4807905848″ locale=”JP” title=”創薬化学”][amazonjs asin=”4759815783″ locale=”JP” title=”ベーシック創薬化学”][amazonjs asin=”4274503615″ locale=”JP” title=”創薬科学入門—薬はどのようにつくられる?”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. だれが原子を見たか【夏休み企画: 理系学生の読書感想文】
  2. Innovative Drug Synthesis
  3. 毎年恒例のマニアックなスケジュール帳:元素手帳2023
  4. 化学探偵Mr.キュリー7
  5. フィンランド理科教科書 化学編
  6. 【書籍】機器分析ハンドブック1 有機・分光分析編
  7. 持続可能性社会を拓くバイオミメティクス
  8. 交響曲第6番「炭素物語」

注目情報

ピックアップ記事

  1. 人名反応に学ぶ有機合成戦略
  2. 三菱ケミの今期経常益‐1.8%に、石化製品市況弱く
  3. ChemRxivへのプレプリント投稿・FAQ
  4. ペプチド縮合を加速する生体模倣型有機触媒
  5. キムワイプLINEスタンプを使ってみよう!
  6. エヴァンスアルドール反応 Evans Aldol Reaction
  7. 第19回 有機エレクトロニクスを指向した合成 – Glen Miller
  8. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartIII+薬学会も!
  9. 今年は共有結合100周年ールイスの構造式の物語
  10. 荒木飛呂彦のイラストがCell誌の表紙を飾る

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー