[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

創薬化学

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4807905848″ locale=”JP” title=”創薬化学”]

内容

創薬化学は、有機化学を基盤科学として、薬理学、生化学、分子生物学、分析化学、薬物動態学、製剤学、生命情報学など多くの基礎科学に関連した学際的学問であり、これからさらに発展が期待される21世紀の学問と位置づけられる。本書は創薬化学を初めて学ぶ者にとって必要不可欠なものを厳選して記載した。いずれの章も“創薬”の観点から学部学生、大学院生にとって必要と思われる記述に限定して、それぞれの専門家が執筆した。(内容紹介より)

対象

  • 薬学・創薬化学を学びはじめた学部生~大学院修士
  • これから創薬化学の世界に入門される方
  • 医薬品情報担当者や薬理研究者

解説

医薬品はどうやって作られ、試験され、世に出されるのか?これを考えるためには、まず何をおいても「創薬化学」の基礎と全体像を押さえておく必要がある。

本書は薬学部の学部生・大学院生を主たる対象に、創薬化学の入門的知識を提供する目的で執筆された教科書である。

低分子創薬に関する主なトピック・エッセンスはほぼ網羅され、それぞれ系統立てて解説されている。後半部では代表的低分子医薬の開発経緯なども紹介されており、現場の創薬研究がどのような過程を経てきているかについても、実例にもとづき学ぶことができる。良書であるがあくまで最初の1冊という想定のため、各項目に関しては紹介程度の記載しか無いものが多い。本書の読破後に、より発展的な書籍を読んでいくこととなるはずだ。

本書は2004年刊行であり、第1刷から既に10年以上が経過している。読者の多い教科書であれば既に改訂時期だろうが、「学部生向けに低分子創薬の基礎を理解させる」という目的に限れば、総じて今でも通用する内容だと思える。とはいえ「創薬化学のパラダイムシフト」として紹介される例が、今では当たり前に過ぎるゲノム創薬とコンピュータ補助設計であることからも、やはり幾ばくかの古さは否めない。先端トピック紹介の部分だけでも追記が必要なタイミングかも知れない。また伝統ある低分子創薬を主に扱う都合上、昨今台頭著しいバイオ医薬に関しては記載が薄めである。これについては「ここまで進んだ次世代医薬品」を補助読本として読むと、理解が進むと思われる。

同レベルの書籍としては佐藤健太郎著「創薬科学入門」が挙げられるだろう。こちらも入門教科書としての使用に堪えうる構成だが、読み物的な筆致で書かれており読みやすい。これと本書を合わせて読めば、低分子創薬のプロセスと、それに必要となる一通りの基礎・考え方・概念・道具は大づかみできると思われる。

関連書籍

[amazonjs asin=”4274503615″ locale=”JP” title=”創薬科学入門—薬はどのようにつくられる?”][amazonjs asin=”4759815783″ locale=”JP” title=”ベーシック創薬化学”]

関連リンク

気ままに創薬化学

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 化学探偵Mr.キュリー6
  2. 構造生物学
  3. 【書籍】有機反応機構の書き方 第2版
  4. 【書籍】ゼロからの最速理解 プラスチック材料化学
  5. 改正 研究開発力強化法
  6. 化学のブレークスルー【有機化学編】
  7. 2009年10月人気化学書籍ランキング
  8. なぜあなたの研究は進まないのか?

注目情報

ピックアップ記事

  1. 松原 亮介 Ryosuke Matsubara
  2. ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!
  3. 化学者たちのネームゲーム―名付け親たちの語るドラマ
  4. 前人未踏の超分子構造体を「数学のチカラ」で見つけ出す
  5. 初めての減圧蒸留
  6. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑭: 液タブ XP-PEN Artist 13.3 Proの巻
  7. カーボンナノリングのキーホルダー式固定化法の開発
  8. ハンチュ ジヒドロピリジン合成  Hantzsch Dihydropyridine Synthesis
  9. 力を加えると変色するプラスチック
  10. マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくある失敗とその対策とは?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー