[スポンサーリンク]

分析化学

NMR in Organometallic Chemistry

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”3527330135″ locale=”JP” title=”NMR in Organometallic Chemistry”]  

内容

The first and ultimate guide for anyone working in transition organometallic chemistry and related fields, providing the background and practical guidance on how to efficiently work with routine research problems in NMR. The book adopts a problem–solving approach with many examples taken from recent literature to show readers how to interpret the data. Perfect for PhD students, postdocs and other newcomers in organometallic and inorganic chemistry, as well as for organic chemists involved in transition metal catalysis. (内容紹介文より)

対象

有機金属錯体・有機金属触媒・無機錯体の研究に取り組み始めて間もない大学院生、博士研究員、専門研究者

解説

有機金属錯体に触れたことのある方は、ケムステ読者の中には意外に多いかもしれない。だがその精緻なNMR解析にまで手を出した経験を持つ方は、どれほどいらっしゃるだろうか。 金属錯体のNMRは、多様な元素を含む事情から多核解析となることが多く、配座異性の多様さも手伝って複雑な挙動を示す。1H・13C・31Pなどの汎用核種であっても、通常の有機化合物とは異なる化学シフト値を示すケースもある。このようなことは、NMRの基本教科書を当たることで一応の理解は得られるものの、金属錯体に特化した内容を探るには効率が良くない面もある。 この際のガイドとして有用な書籍が、今回取りあげる「NMR in Organometallic Chemistry」である。金属錯体のNMRに特化した内容の書籍だが、あくまで金属錯体の入門研究者向けに執筆されている。たとえば1章分をまるまる割いて、有機金属化学の基本事項がまとめられていることからも、その姿勢が読み取れる。 極めて特殊な測定法を網羅的に取りあげている構成でもない。研究現場でルーチンとして使われる基本測定法について、むしろ重点的に解説していることは有難い。 具体的には3~5章がCOSY、HMQC/HMBC、NOESY/HOESY、DOSYなどの2次元測定、6,7章が化学シフト値・カップリング定数、8章が錯体の動的挙動を見積もる測定法を扱う章立てとなっている。 NMRの読み方自体は有機化合物と同じであるが、多核測定・配座異性体が絡む宿命ゆえの複雑な例も少なくない。そのようなチャートの例が多数示されており、NMR解析のケーススタディ集としても役に立つだろう。本書で取りあげられている例をいくつか抜粋してみよう。このような「金属錯体ならでは」が本書には盛りだくさんである。 NMR_Organomet_1 11章では金属錯体NMRについての演習問題が掲載されている(主には1H・13C・31P)。これもなかなか他の書籍には見られないコンテンツである。本書のサンプル問題を以下に一つ抜粋してみた。読者の皆さんは解くことができるだろうか?   NMR_Organomet_2 2012年刊行と言うことで、参考文献が新しいのも良い点である。有機金属化学に入門したばかりの研究者にお勧めしたい1冊である。  

関連書籍

[amazonjs asin=”3527325166″ locale=”JP” title=”Classics in Spectroscopy”][amazonjs asin=”3527327827″ locale=”JP” title=”Basic One- and Two-Dimensional NMR Spectroscopy”][amazonjs asin=”4807908502″ locale=”JP” title=”ハートウィグ 有機遷移金属化学(上)”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の…
  2. 免疫(第6版): からだを護る不思議なしくみ
  3. なぜあなたは論文が書けないのか
  4. 【書籍】セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医…
  5. 【書籍】電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論
  6. The Sol-Gel Handbook: Synthesis,…
  7. 革新的医薬品の科学 薬理・薬物動態・代謝・安全性から合成まで
  8. きみの未来をさがしてみよう 化学のしごと図鑑

注目情報

ピックアップ記事

  1. ブレデレック ピリミジン合成 Bredereck Pyrimidine Synthesis
  2. 化学プラントにおけるAI活用事例
  3. マイケル・グレッツェル Michael Gratzel
  4. 難分解性高分子を分解する画期的アプローチ:側鎖のC-H結合を活性化して主鎖のC-C結合を切る
  5. 【産総研・触媒化学融合研究センター】新卒・既卒採用情報
  6. マテリアルズ・インフォマティクスにおける初期データ戦略 -新規テーマでの対応方法をご紹介-
  7. マイクロ波の技術メリット・事業メリットをお伝えします!/マイクロ波化学(株)11月・12月度ウェビナー
  8. ネフ反応 Nef Reaction
  9. フルエッギン Flueggine
  10. 有機硫黄ラジカル触媒で不斉反応に挑戦

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

有機合成化学協会誌2025年2月号:C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。…

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー