[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

透明金属が拓く驚異の世界 不可能に挑むナノテクノロジーの錬金術

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”479733732X” locale=”JP” title=”透明金属が拓く驚異の世界 不可能に挑むナノテクノロジーの錬金術 (サイエンス・アイ新書)”]

概要

タッチパネル等、身の回りに溢れている透明電極。「光(可視光)を通す」と「電気を流す」という全く異なるように聞こえる性質を同時に達成するのがなぜ難しいのか?高校化学・物理レベルから丁寧に解説。

対象

理系高校生以上

解説

著者は東京工業大学の細野秀雄教授と神谷利夫教授。細野教授は鉄ヒ素系の超電導材料やシャープの商標問題で最近話題になった透明電極”IGZO”等の研究で著名。

本書ではまず「電気が流れる」というのはどういうことかという説明から始まります。理系の方であれば電流は電子の移動に起因することは常識ですが、導体(金属)中でいったい何個の電子が移動しているかご存知でしょうか?またその数は半導体や絶縁体中で移動出来る電子の数と比べてどの程度違うのか?これら電子の数を簡単な計算で求め、電気が流れる性質を得るために最低限必要になる移動可能な電子の数を示します。

電気を流したいのだから移動できる電子があればあるほど良いように思えます。なぜこのような計算が必要なのかというと、導体や半導体における光(可視光)の吸収・反射はこの移動可能な電子の存在に大きく関係するからです。つまり透明電極材料を作るには電気が流れるのに最低限必要な数の電子を確保しつつ、電子による光の反射・吸収を抑える工夫が必要になります。

上記の説明を土台に、「IGZO」「透明アモルファス半導体」や「C12A7」について研究開発の流れに沿って解説されており、現場で研究が進んでいく時の興奮と熱気も伝わってきます。透明電極や半導体に興味がある方はもちろん、研究者になりたい高校生や学部生にもお勧めです。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4763199951″ locale=”JP” title=”好きなことに、バカになる”] [amazonjs asin=”4882316560″ locale=”JP” title=”透明酸化物機能材料とその応用 (エレクトロニクス材料・技術シリーズ)”] [amazonjs asin=”4781302688″ locale=”JP” title=”酸化物半導体と鉄系超伝導―新物質・新機能・応用展開 (エレクトロニクスシリーズ)”]

 

Ohno

投稿者の記事一覧

博士(理学)。ナノ材料に関心があります。

関連記事

  1. Practical Functional Group Synth…
  2. English for Presentations at Int…
  3. 化学で何がわかるかーあなたの化学、西暦何年レベル?ー
  4. ドラえもん探究ワールド 身近にいっぱい!おどろきの化学
  5. 【書籍】合成化学の新潮流を学ぶ:不活性結合・不活性分子の活性化
  6. 2009年10月人気化学書籍ランキング
  7. 化学知識の源、化学同人と東京化学同人
  8. 学振申請書の書き方とコツ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ホウ素 Boron -ホウ酸だんごから耐火ガラスまで
  2. アメリカで Ph.D. を取る –奨学金を申請するの巻–
  3. 2011年ノーベル化学賞予想ーケムステ版
  4. 高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用:高分子シミュレーションの応用
  5. メソポーラスシリカ(2)
  6. 人工細胞膜上で機能するDNAナノデバイスの新たな精製方法を確立
  7. 恋する創薬研究室
  8. Nazarov環化を利用した全合成研究
  9. 東レ先端材料シンポジウム2011に行ってきました
  10. 研究者のためのCG作成術②(VESTA編)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー