[スポンサーリンク]

分光分析

有機スペクトル解析ワークブック

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4807908391″ locale=”JP” title=”有機スペクトル解析ワークブック”]

 

概要

本書は,スペクトルデータによる有機化合物の構造決定法を習得するための新しい方法をコンピューターを活用して構築したいという長年の計画から生まれた.化学構造を決定する力は暗黙の経験やひらめきによって培われるため,多くの演習問題を解くことは重要である.本書の各演習問題には,4種類のスペクトルチャートに加えて,各スペクトルの解析法の詳細や化合物の構造の導き方に関する説明が記載されている.解析法に関する説明は後ろにいくに従って少なくなり,最後の数問はほとんど説明が加えられていない.すべての問題に対する答は与えられているが,構造式については問題のページには載せていない.そのため,スペクトルを解析するにつれて構造が明らかになったところから少しずつ構造式を描いていくことができるだろう(著者筆)

 

対象

化学系大学生・大学院生

 

内容

NMR,IR, MASS等のスペクトル解析を学ぶための演習書である。本書は大変渋い外観であり、とても2014年に発売された新書にはみえない。B5版の267頁からなりスペクトル解析の書籍としてはコンパクトなサイズである。演習問題100題とスペクトル解析に役立つ付録からなる。

そもそもこの本を紹介するきっかけは、筆者が有機スペクトル解析の講義をもっており、演習に最適な書籍はないかと探していたところからある。Organic Structures from Spectra(関連書籍参照)がNMR, IR, MASSがすべて掲載されていて演習に最適な書籍ではあるが、解説がなく自学するためには少し難易度が高い。それに対して本書は、左頁に各種スペクトル、右頁に夫々のスペクトルの詳細な解説があり、非常にわかりやすい。この一冊をマスターすれば(すべてでなくとも)学部の演習としては申し分なく有り余るほどだ。もちろん、研究室配属後や大学院進学後でもスペクトル解析が苦手な学生は一日1問ずつでもトライしてみると良いだろう。100日あれば終わるのでおよそ3ヶ月で概ねスペクトル解析をマスターできる。書籍の後半にあるデータ集および用語解説もカラー刷りでわかりやすくみやすい。演習だけでなく本書がデータ集としても使えることを意味している。

難点をいえば、各問題に特徴のあるスペクトルを扱っているが、それぞれの問題に関連がないことだ。ポイントや覚えておいたほうがよい事柄などを「重要ポイント」 等でまとめ、各問題で類似の事柄がでてくれば、そこや付録を参照できるようにすれば、問題同士がリンクされより理解が深まると考えられる。つまり、問題を解いている際に「この考えどこででてきたっけ?」と思った時に、すぐに参照できるような誘導が(◯頁参照)欲しかった。一方で、問題それぞれが独立していると、講義の演習として数個使わせていただく際は大変ありがたいつくりになっている。

特に最近はマススペクトルの発達により、NMRと向きあう時間が昔に比べて激減しており、すなわちNMRのみで構造決定することに慣れていない。スペクトル解析は演習有るのみである。もちろん自身の化合物を使って学んでいくOJTがもっとも効果的であるが、スペクトルの多様性に関してはどうしても劣る。

価格も3,000円と比較的お手頃なのでぜひ購入してスペクトル解析を極めていただきたい。

 

2014-12-08_08-34-00

書籍外観(演習部分ではない)

 

関連書籍

[amazonjs asin=”1118325494″ locale=”JP” title=”Organic Structures from Spectra”]

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【書籍】機器分析ハンドブック3 固体・表面分析編
  2. ドラマチック有機合成化学: 感動の瞬間100
  3. 学問と創造―ノーベル賞化学者・野依良治博士
  4. 化学するアタマ―論理的思考力を鍛える本
  5. 【書籍】化学系学生にわかりやすい 平衡論・速度論
  6. 赤外線の化学利用:近赤外からテラヘルツまで
  7. 元素周期 萌えて覚える化学の基本
  8. レア RARE 希少金属の知っておきたい16話

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第3回ITbM国際シンポジウム(ISTbM-3)、第11回平田アワード、第1回岡崎アワード
  2. 医療用酸素と工業用酸素の違い
  3. 先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合
  4. アズレンの蒼い旅路
  5. 日本の化学産業を支える静岡県
  6. 服部 倫弘 Tomohiro Hattori
  7. 吉野 彰 Akira Yoshino
  8. バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング Buchwald-Hartwig Cross Coupling
  9. 【書籍】研究者の仕事術~プロフェッショナル根性論~
  10. 特定の刺激でタンパク質放出速度を制御できるスマート超分子ヒドロゲルの開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー