-
概要
本書は京都大学の上杉志成教授の名物講義「生命の化学」の一部を書籍化したもの。副題は―化学と生物学が融合すればアイデアがどんどん湧いてくるーである。
-
対象
大学生、大学院生、科学に興味のある一般市民
-
解説
ハーバード大学の名物講義、Michael Sandel教授による「これからの正義の話をしよう」はTVで放映されるなどして、社会現象とまではいかないまでも一時大ブームをおこした。あとを追うようにたくさんの似たような書籍が出ていたが、化学に関連するものは無かったように思われる。
本書は「化学」と「生物学」の融合、すなわちケミカルバイオロジー分野で成果を上げておられる上杉教授の京大における人気講義の内容を知ることができる貴重な書ともいえる。当該講義はedXでも英語版が配信されている。詳細はこちら。
内容はケミカルバイオロジーというよりも、科学全般に通づる発想の仕方や、科学的なものの見方となっている。
化学式や構造式、生物学の細かい話題はほとんど皆無であり、初歩については図などと共に解説があることから、専門的知識がほとんど無い状態でもすんなり読むことができる。本書は上杉教授の初めての一般書ということもあるのか、かなり砕けた語り口になっており、通して読んでみると書籍としては希薄に感じるかもしれない。実際一日もかからずに読めてしまった。しかし、本書は講義ノートを一般公開するような趣旨と考えられるので、重厚な内容を学ぶというよりは、講義のライブ感を体感するための書と捉えるべきであろう。
講義を受講する学生に対しては毎回宿題が課されるようで、我が国の大学の講義のやり方としてはかなりユニークである。その宿題の内容も何かを調べてくるとか、何かの問題を解いてくるとかではなく、徹底して学生のイマジネーションを問う内容となっており、工夫が凝らされた講義であることがうかがい知れる。
edXの英語での講義はちょっと・・・という学生にも一読の価値が高い書と言える。
-
関連書籍